雨夜草紙
田中貢太郎
「今度は医学士の弟の方だが、彼には五歳いつつになる女の子があって、悪漢のお祖父じいさんが、非常に可愛がっていたから、それからさきへやったのだ、むせむせする晩春はるさきのことだ、その小供が二階の窓の下で遊んでたから、二三本の赤い芥子けしの花を見せてやったさ、小供の心はすぐその花へ来た、小供は手を延のべて執とろうとしたが執れない、そこで、
(春はるや、春や)
と、小間使こまづかいを呼んだが、返事がないので、じれて来て、窓へ掻かきあがろうとしたが、あがれない、
(春や、春や、春やってば)
と、今度は怒って呼んだが、それでも小間使はやって来ない、僕はその花を小供の眼から離さないように努力していたものさ、そこで、小供は小さな頭をひねって、その花を執とる法を考えたが、やっと椅子いすのことを思いだして、室へやの中から、よっちょらよっちょらと引張って来て、窓際まどぎわへ据すえ、その上にあがって執ろうとしたが、花が掴つかめないので、窓の敷居の上へ這はいあがって、手を一ぱいに延べたので、そのまま下へ落ちてしまったさ、小供には気の毒だが、悪漢の悲しんでいた容さまが痛快だったね、
医師はその比ころから神経に故障が出来たのだ、ある夜よ、眼を覚してみると、並びの寝台に寝ているはずの細君さいくんの姿が見えないのだ、細君の行動に疑問を抱くようになっていた奴やっこさんは、そっと室へやを出て、廊下を通って父親の居間になっている日本間の方へ往くと、廊下のとっつきの小座敷こざしきで人の気配がするのだ、奴さん、そっと障子際しょうじぎわへ寄って耳を立てると、むし笑いに笑う女の声がするが、それがどうしても細君だ、奴さん頭がかっとなるとともに、体が顫ふるひだしたが[#「顫ふるひだしたが」はママ]すぐ奴さんに自制力が出来た、
(ただ亢奮こうふんする時でないぞ)
と、奴さんは歯をくいしばったのだ、そして、耳を澄まして見ると、女の声は無くなって、父親が何か小さい声で話している声が聞える、
(しかし、あの笑い声は、たしかに彼だ)
奴さんは近比ちかごろ細君の行動の怪しいことから、傍の寝台にいなかったこと、むし笑いに笑った女の声が、たしかに細君の声であったことを思いだして、世界が暗くなったのだ、しかし、
(待てよ、このことは、己じぶんの身にとって、青木一家にとって、極めて重大な事件だ、これは、好く前後を考えたうえの所置にしなければならん)
と、奴さん稍やや精神がはっきりしたので、己の寝室へ帰って往ったのだ、そして、室の中へはいってみると、細君は己の寝台の上ですやすや睡ねむっているのだ、奴さんは己の神経の狂くるいで奇怪な幻を画えがいたことに気が注つかないから、びっくりして眼を睁みはったのだ、そこで奴さんは、その晩のことは己の邪推であったと思うようになったが、それでも細君に対する疑惑は薄らがなかったさ、それから五六日して、夕方芝口しばぐちを散歩していると、背後うしろから一台の自動車が来たが、ふと見ると、それには深ぶかと青い窓掛まどかけを垂れてあった、それが奴やっこさんを追越そうとしたところで、中からちょっと窓掛を捲まいて、白い顔を出した女があった、それが細君さいくんさ、細君はその日三時から本郷ほんごうの公爵家で催す音楽会へ往っている筈はずである、おかしいぞと思って、内を透すかすと、男の隻頬かたほおが見えた、それは父親の顔であった、奴さんの眼前めさきはまた暗んだのさ、
(怪けしからん、怪しからん)
奴さん自暴自棄やけくそになって、もと往ったことのある烏森からすもりの待合まちあいへ往って、女を対手あいてにして酒を飲んでいたが、それも面白くないので、十二時比ころになって自宅うちへ帰ったさ、
(今日は大変面白うございましたよ)
と、奴さんを待っていた細君が悦うれしそうな顔をして云うのを、何も云わずに睨にらみつけたさ、細君はその凄すごい眼の光を見て、どうしたことが出来たのかと思って、口をつぐんではらはらとして立ったのだ、僕はその時、細君の横手になった大きな姿見すがたみの中へ顔を出していたが、二人とも見なかったのだ、それから五六日経たった、奴さんとろとろ睡ねむっていて、眼を開けてみると、また細君がいない、しかし何時いつかの夜のことがあっているので、好く眼を据すえて見定めてみたが、たしかにいないと云うことが判った、が、また便所へ往っていないとも限らないと思って、十分ばかり起きあがらずに待っていたが、細君は入って来ない、そこでまた廊下へ出て、廊下を日本間の方へ往ったのだ、往ってみると、怪しい囁ささやきのしていた室へやの前の雨戸が五六寸開あいているから、それを見ると、その開口あきぐちを広くして裸足はだしで庭へおりたさ、遅い月が出て、庭は明るかった、池の傍を廻って、新緑の匂においのぷんぷんする植込みの下の暗い処を歩いて、仮山つきやまの背後うしろになった四阿屋あずまやの方へ往ったのだ、四阿屋の中には、人のひそひそと話す声がしていた、枝葉の間からそっと覗のぞくと、月の陰になって中にいる人は見えないが、あまえるような女の声はたしかに細君さいくんで、他の声はがすがすする父親の声なのだ、
(なんと云う醜体だ)
と、奴やっこさんは顫ふるひだしたが[#「顫ふるひだしたが」はママ]、忽たちまち引返して己じぶんの寝室へ入り、机の抽斗ひきだしにしまってあった短銃ぴすとるを持って、はじめの処へ往き、また、枝葉の間から眼を出して、四阿屋のなかを透すかして見た、四阿屋の中では話声はしなかったが、もそりもそりと物の気配がしていた、
(畜生ちくしょうどもたしかにいるぞ)
と、奴さんは眼を睁みはったさ、白い手や白い顔がはっきりと暗い中に見えた、奴さんの右の手の短銃ぴすとるの音が大きな音を立てたのだ、
(貴方あなたは何をなさるのです)
奴さんが短銃ぴすとるを持ち出して往く姿をちらと見て、後あとをつけて来た細君が抱きついたのだ、四阿屋の中には僕の影がおったさ、そこへ悪漢の青木が来る、書生が来るして、発狂してしまった奴さんを執とり押えたのだ、その奴さんは、今至誠病院の一室しつで狂い廻って、悪漢の心をさんざんに掻かき乱しているが、もう長いことはないし、悪漢の寿命も今明年こんみょうねんのものさ、僕は思いどおりに復讐することができたが、こうなってみると仇かたきながらも可哀そうだ」
私にこの話を聞かしてくれた仮名かりなの山田三造君は、最後にこんなことを云った。
「それが夢であったか、起きていた時であったか、どうもはっきりしないが、その朝、隣室で小供といっしょに寝ていた妻さいが、昨夜ゆうべ遅くお客さんがありましたね、長いこと何か話してましたね、それからお客さんのかえりに、貴方あなたがお客さんに挨拶あいさつをして、玄関の戸を締めたことを、うつつに覚えておりますよと云ったが、僕にはその覚えがない」
田中貢太郎
「今度は医学士の弟の方だが、彼には五歳いつつになる女の子があって、悪漢のお祖父じいさんが、非常に可愛がっていたから、それからさきへやったのだ、むせむせする晩春はるさきのことだ、その小供が二階の窓の下で遊んでたから、二三本の赤い芥子けしの花を見せてやったさ、小供の心はすぐその花へ来た、小供は手を延のべて執とろうとしたが執れない、そこで、
(春はるや、春や)
と、小間使こまづかいを呼んだが、返事がないので、じれて来て、窓へ掻かきあがろうとしたが、あがれない、
(春や、春や、春やってば)
と、今度は怒って呼んだが、それでも小間使はやって来ない、僕はその花を小供の眼から離さないように努力していたものさ、そこで、小供は小さな頭をひねって、その花を執とる法を考えたが、やっと椅子いすのことを思いだして、室へやの中から、よっちょらよっちょらと引張って来て、窓際まどぎわへ据すえ、その上にあがって執ろうとしたが、花が掴つかめないので、窓の敷居の上へ這はいあがって、手を一ぱいに延べたので、そのまま下へ落ちてしまったさ、小供には気の毒だが、悪漢の悲しんでいた容さまが痛快だったね、
医師はその比ころから神経に故障が出来たのだ、ある夜よ、眼を覚してみると、並びの寝台に寝ているはずの細君さいくんの姿が見えないのだ、細君の行動に疑問を抱くようになっていた奴やっこさんは、そっと室へやを出て、廊下を通って父親の居間になっている日本間の方へ往くと、廊下のとっつきの小座敷こざしきで人の気配がするのだ、奴さん、そっと障子際しょうじぎわへ寄って耳を立てると、むし笑いに笑う女の声がするが、それがどうしても細君だ、奴さん頭がかっとなるとともに、体が顫ふるひだしたが[#「顫ふるひだしたが」はママ]すぐ奴さんに自制力が出来た、
(ただ亢奮こうふんする時でないぞ)
と、奴さんは歯をくいしばったのだ、そして、耳を澄まして見ると、女の声は無くなって、父親が何か小さい声で話している声が聞える、
(しかし、あの笑い声は、たしかに彼だ)
奴さんは近比ちかごろ細君の行動の怪しいことから、傍の寝台にいなかったこと、むし笑いに笑った女の声が、たしかに細君の声であったことを思いだして、世界が暗くなったのだ、しかし、
(待てよ、このことは、己じぶんの身にとって、青木一家にとって、極めて重大な事件だ、これは、好く前後を考えたうえの所置にしなければならん)
と、奴さん稍やや精神がはっきりしたので、己の寝室へ帰って往ったのだ、そして、室の中へはいってみると、細君は己の寝台の上ですやすや睡ねむっているのだ、奴さんは己の神経の狂くるいで奇怪な幻を画えがいたことに気が注つかないから、びっくりして眼を睁みはったのだ、そこで奴さんは、その晩のことは己の邪推であったと思うようになったが、それでも細君に対する疑惑は薄らがなかったさ、それから五六日して、夕方芝口しばぐちを散歩していると、背後うしろから一台の自動車が来たが、ふと見ると、それには深ぶかと青い窓掛まどかけを垂れてあった、それが奴やっこさんを追越そうとしたところで、中からちょっと窓掛を捲まいて、白い顔を出した女があった、それが細君さいくんさ、細君はその日三時から本郷ほんごうの公爵家で催す音楽会へ往っている筈はずである、おかしいぞと思って、内を透すかすと、男の隻頬かたほおが見えた、それは父親の顔であった、奴さんの眼前めさきはまた暗んだのさ、
(怪けしからん、怪しからん)
奴さん自暴自棄やけくそになって、もと往ったことのある烏森からすもりの待合まちあいへ往って、女を対手あいてにして酒を飲んでいたが、それも面白くないので、十二時比ころになって自宅うちへ帰ったさ、
(今日は大変面白うございましたよ)
と、奴さんを待っていた細君が悦うれしそうな顔をして云うのを、何も云わずに睨にらみつけたさ、細君はその凄すごい眼の光を見て、どうしたことが出来たのかと思って、口をつぐんではらはらとして立ったのだ、僕はその時、細君の横手になった大きな姿見すがたみの中へ顔を出していたが、二人とも見なかったのだ、それから五六日経たった、奴さんとろとろ睡ねむっていて、眼を開けてみると、また細君がいない、しかし何時いつかの夜のことがあっているので、好く眼を据すえて見定めてみたが、たしかにいないと云うことが判った、が、また便所へ往っていないとも限らないと思って、十分ばかり起きあがらずに待っていたが、細君は入って来ない、そこでまた廊下へ出て、廊下を日本間の方へ往ったのだ、往ってみると、怪しい囁ささやきのしていた室へやの前の雨戸が五六寸開あいているから、それを見ると、その開口あきぐちを広くして裸足はだしで庭へおりたさ、遅い月が出て、庭は明るかった、池の傍を廻って、新緑の匂においのぷんぷんする植込みの下の暗い処を歩いて、仮山つきやまの背後うしろになった四阿屋あずまやの方へ往ったのだ、四阿屋の中には、人のひそひそと話す声がしていた、枝葉の間からそっと覗のぞくと、月の陰になって中にいる人は見えないが、あまえるような女の声はたしかに細君さいくんで、他の声はがすがすする父親の声なのだ、
(なんと云う醜体だ)
と、奴やっこさんは顫ふるひだしたが[#「顫ふるひだしたが」はママ]、忽たちまち引返して己じぶんの寝室へ入り、机の抽斗ひきだしにしまってあった短銃ぴすとるを持って、はじめの処へ往き、また、枝葉の間から眼を出して、四阿屋のなかを透すかして見た、四阿屋の中では話声はしなかったが、もそりもそりと物の気配がしていた、
(畜生ちくしょうどもたしかにいるぞ)
と、奴さんは眼を睁みはったさ、白い手や白い顔がはっきりと暗い中に見えた、奴さんの右の手の短銃ぴすとるの音が大きな音を立てたのだ、
(貴方あなたは何をなさるのです)
奴さんが短銃ぴすとるを持ち出して往く姿をちらと見て、後あとをつけて来た細君が抱きついたのだ、四阿屋の中には僕の影がおったさ、そこへ悪漢の青木が来る、書生が来るして、発狂してしまった奴さんを執とり押えたのだ、その奴さんは、今至誠病院の一室しつで狂い廻って、悪漢の心をさんざんに掻かき乱しているが、もう長いことはないし、悪漢の寿命も今明年こんみょうねんのものさ、僕は思いどおりに復讐することができたが、こうなってみると仇かたきながらも可哀そうだ」
私にこの話を聞かしてくれた仮名かりなの山田三造君は、最後にこんなことを云った。
「それが夢であったか、起きていた時であったか、どうもはっきりしないが、その朝、隣室で小供といっしょに寝ていた妻さいが、昨夜ゆうべ遅くお客さんがありましたね、長いこと何か話してましたね、それからお客さんのかえりに、貴方あなたがお客さんに挨拶あいさつをして、玄関の戸を締めたことを、うつつに覚えておりますよと云ったが、僕にはその覚えがない」
高い城の男
日本では1965年に川口正吉によって翻訳され、ハヤカワ・SF・シリーズ(早川書房)から刊行された。1984年から新たに浅倉久志による新訳版がハヤカワ文庫から出版された。
2015年、ドラマ化が発表され、同年11月からAmazonビデオにおいてドラマ『高い城の男』の配信が開始された。
概要
第二次世界大戦が枢軸国の勝利に終わり、大日本帝国とナチス・ドイツによって分割占領されている旧アメリカ合衆国領を舞台にした人間群像劇。
歴史改変SFでは珍しくない設定だが、作品内世界で「もしも連合国が枢軸国に勝利していたら」という歴史改変小説が流行しているという点と、東洋の占術(易経)が同じく流行していて、複数の人物が易経を指針として行動するという部分が独創的である。ディック自身も、本作のプロットを作る際に易経を利用している。後半になるにつれてディック特有の形而上学・哲学的な思索やメタフィクションが展開される一方、ディック作品にありがちなプロットの破綻が生じていない。そうした点からアメリカやイギリスなど英語圏ではディック作品の代表作として挙げられることも多い。
作中の枢軸国の描写に関してはそれぞれに違いがある。日本人は勝者として傲慢な部分もあるものの、人種政策でドイツと対立するなどある程度は話が通じる人間的な集団として描かれている。逆にドイツ人は反ナチ派が軒並み粛清されており、ナチズムの狂気に満ちた集団として描かれている。イタリア人は表面的には日独と並んで戦勝国として扱われているが実態としてはドイツの衛星国であり、その劣等感からアメリカ人に同情する描写が描かれている。また作品中に登場する歴史改変小説は、現実の第二次世界大戦とも異なった形で連合国が勝利する内容になっている。
1947年、第二次世界大戦は枢軸国の勝利に終わり、アメリカ合衆国は戦勝国であるドイツと日本によって三つの国に分断され、両国の分割統治下に置かれていた。それから15年後の1962年、アメリカ人の間では謎の人物「高い城の男」によって執筆された『イナゴ身重く横たわる』[5] という、「連合国が第二次世界大戦に勝利していたら」という仮想小説が流行していた。『イナゴ身重く横たわる』はドイツが支配するアメリカ合衆国およびヨーロッパでは発禁本に指定され、「高い城の男」は保安警察に命を狙われていた。
日本が支配するアメリカ太平洋岸連邦のサンフランシスコにあるアメリカ美術工芸品商会を経営する美術商ロバート・チルダンは、上得意先である田上信輔に、頼まれていた品物の手配が遅れていることを叱責され、代わりの品物を届けるために田上がいる通商代表部に向かう。一方、勤め先の工場をクビになったフランク・フリンクは、これからの指針を求めて易経に勤しんでいた。田上もまた、「取引相手である実業家バイネスの正体を探れ」という日本政府からの指令に悩み易経を頼みとしていた。
日本の影響下にあるロッキー山脈連邦のキャノン・シティに暮らすジュリアナ・フリンクは、合衆国から仕事でやって来たイタリア移民のジョー・チナデーラと出会い、成り行きで一夜を共にする。ジュリアナは、ジョーが持っていた『イナゴ身重く横たわる』に興味を持ち、「高い城の男」が住むシャイアンに共に行くことになる。その頃チルダンは、日本海軍の春沢提督の使者と名乗る男から「あなたが扱っている美術品は模造品だ」と告げられ面目を失い、取引相手であるキャルヴィンを問い詰める。一方で地元の新聞社に問い合わせた結果、提督の乗艦であると聞かされていた航空母艦翔鶴は戦時中にアメリカ軍の潜水艦によって沈められており、春沢提督なる人物も存在しないことが判明する。春沢提督の使者を騙る者の正体はフランクであり、友人のマッカーシーと組み、元上司で模造品の元締めのウインダム=マトスンから退職金を巻き上げる。
同じ頃、ドイツでは最高指導者のボルマン首相が死去したことでナチ党内部の権力闘争が激化し、アメリカにも影響が及び始める。一方、フランクとマッカーシーは、ウインダム=マトスンから巻き上げた退職金でエドフランク宝飾工房を起業し、自身の腕を活かした装身具を作り、その装身具をチルダンに売り付けようとするが、チルダンに言い包められ委託取引にされてしまう。装身具を手にしたチルダンは、それまで扱ってきた過去の遺物である骨董品とは違うアメリカの「未来」の姿を感じ、アメリカ人としての自信を取り戻す。
その頃、日本軍の手崎将軍から連絡を受けた田上は、バイネスをオフィスに呼び三者会談を行う。会談の中で、バイネスは自分がドイツ国防軍情報部のヴェゲナー大尉であることを明かし、ボルマン政権と、その後を継いだゲッベルス政権が対日核攻撃作戦「タンポポ(レーヴェンツァーン)作戦」を計画していることを語り、計画を阻止するため作戦反対派のハイドリヒに助力して欲しいと告げる。その時、バイネスの正体を掴んだ保安警察のメーレ将軍が送り込んだ工作員が現れ銃撃戦となるが、田上が工作員を射殺し事態を収束させる。手崎将軍は対応を協議するため日本に帰国し、任務を果たしたヴェゲナー大尉もドイツに帰国する。
「高い城の男」に会うための旅を続けていたジュリアナとジョーはデンヴァーに到着する。しかし、そこでジュリアナは、ジョーの正体が「高い城の男」暗殺のため派遣されたナチスの工作員だと気付き、ジョーを殺害しホテルを後にする。途方に暮れたジュリアナは易経を行い、その啓示に従い、「高い城の男」に命が狙われていることを知らせるためにシャイアンに向かう。
翌日、「高い城の男」ことホーソーン・アベンゼンの邸宅に到着したジュリアナは、ナチスの工作員が迫っていることを告げると同時に、何故『イナゴ身重く横たわる』を執筆したのかを尋ねる。ジュリアナの問いに対し、アベンゼンは「易経との契約に基づき書いた」と告白する。ジュリアナは、何故易経が『イナゴ身重く横たわる』を書かせたのかを知るため易経を行い、「真理」の答えを得る。ジュリアナは、『イナゴ身重く横たわる』の世界こそが真実の世界であると知り、アベンゼンに礼を言い邸宅を後にした。
登場人物
ロバート・チルダン
アメリカ太平洋岸連邦で「アメリカ美術工芸品商会」を経営する古美術商。日本人相手に歴史的な美術品を販売しているが、旧合衆国の歴史の浅さから100年ほど前の日用品やポスターなどを扱っている。
敗戦国民として日本人に対し卑屈な態度をとっていたが、エドフランク宝飾工房の装身具をきっかけにアメリカ人としての誇りを取り戻す。
フランク・フリンク
太平洋岸連邦の工芸職人。ユダヤ系アメリカ人。本名は「フランク・フィンク」。合衆国の軍人としてアメリカ本土決戦で枢軸軍と戦った過去を持つ。
終戦後も暫くはレジスタンスを続けていたが、占領統治が進むにつれて武器を捨てた。職人としての腕前は良いが人当たり悪く職場の工場をクビになっている。妻ともども易経に凝っている。
友人のマッカーシーに誘われ「エドフランク宝飾工房」を起業するが、チルダンに対する詐欺行為とユダヤ系の素性が発覚し逮捕される。その後、ドイツへの引き渡しを拒否した田上の計らいで釈放される。
ジュリアナ・フリンク
フランクの妻。美しい風貌をした黒髪の女性。フランクの貧しい生活に嫌気が差して別居、現在はロッキー山脈連邦のコロラド州キャノン・シティで、柔道の教師をしながら暮らしている。
『イナゴ身重く横たわる』の熱心な愛読者で、知り合ったジョーと共に作者の「高い城の男」に会おうと考えている。柔道の有段者で夫と同じく易経にも精通している。
ジョー・チナデーラ
イタリア国籍の退役軍人。北イタリアのミラノ出身。出稼ぎ目的の移民として合衆国に滞在しており、貨物運搬の用心棒としてロッキー山脈連邦を訪れた際にジュリアナと知り合う。浅黒い肌に黒い髪をした男性で、地中海人種的な風貌から東側の人種政策で差別されており、戦勝国出身にも拘らず『イナゴ身重く横たわる』の愛読者となっている。
ファシスト党少年団にも入っていた愛国者でロドルフォ・グラツィアーニの下で北アフリカ戦線に従軍し、エルヴィン・ロンメルからも二級鉄十字勲章を与えられている。正体はスイス出身のブランデンブルク隊工作員。北方人種風の風貌を隠し、密かにホーソーン・アベンゼンを追っていた。
田上信輔(たがみ のぶすけ)
原文では「Tagomi」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。太平洋岸連邦の第一通商代表団の代表を務める日本人官僚。日本政府からバイネスの素性を探ることを命令されている。易経を精神統一の手段としてしばしば用いている。
「タンポポ作戦」の詳細を聞き精神的に衰弱し、SDの通商代表部襲撃とフランクの引き渡し要求でライスと口論となり、心臓発作を起こし倒れる。
ポール・梶浦(ポール・かじうら)
原文では「Kasoura」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。太平洋岸連邦の不遇地域生活水準向上調査委員会の日本人職員。美術品愛好家で、チルダンの店の常連客。
ベティ・梶浦(ベティ・かじうら)
ポールの妻。浅黒い肌に艶やかな黒髪をした女性。
手崎(てざき)
原文では「Tedeki」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。元日本軍参謀総長の老将軍。軍部の宇宙進出推進派。「矢田部信次郎」の偽名を使い、サンフランシスコを訪れる。
府馬五十雄(ふま いそお)
原文では「Ito(名)Humo(姓)」であるため、浅倉訳版で姓名が改変されている(川口訳版では原文のママ)。日本陸軍の退役少佐。旧アメリカ美術品の収集家で、4年前に古本屋を経営していたチルダンのもとを訪れ、彼の美術商への転身のきっかけを作る。
エフレイキアン
第一通商代表団オフィスの職員で、田上の秘書。背が高く、褐色の髪をしたアルメニア系の女性。
ラムジー
第一通商代表団オフィスの職員で、田上の秘書。アメリカ系白人の男性。
ルドルフ・ヴェゲナー
ドイツ国防軍情報部の大尉。ドイツ国内の要人の密命を受け、スウェーデン人実業家「バイネス」の偽名を使いサンフランシスコを訪れる。
ドイツに帰国後、国防軍と連携したSSに拘束される。
フーゴー・ライス
サンフランシスコ駐在ドイツ帝国領事を務める男爵。SS名誉少佐の階級を持ち、形式上メーレの指揮下にある。
ブルーノ・クロイツ・フォン・メーレ
太平洋岸連邦のSD地方長官。ハイドリヒ暗殺計画を阻止したことで目をかけられ、SD内での地位を確立する。
アレックス・ロッツェ
ドイツ人芸術家。個展を開くためサンフランシスコを訪れる。飛行機で隣席だったバイネスの「自分はユダヤ人だ」という冗談を真に受け、ドイツ領事館に「サンフランシスコにユダヤ人がいる」と密告する。
ウインダム=マトスン
WMコーポレーションの社長。フランクの雇い主。複数の企業の大株主であり、太平洋岸連邦の政府首脳部と繋がっている。
エド・マッカーシー
ウインダム=マストンが経営する工場の現場監督で、フランクの友人。フランクとともにエドフランク宝飾工房を起業する。
レイ・キャルヴィン
サンフランシスコで一・二を争う卸売業者。ウインダム=マストンが製造する模造品を取扱い、チルダンと取引をしている。
ホーソーン・アベンゼン
『イナゴ身重く横たわる』の作者。通称「高い城の男」。第二次世界大戦ではアメリカ海兵隊の軍曹としてイギリス戦線に従軍した。
現在はロッキー山脈連邦のシャイアンにある山奥の要塞(通称「高い城」)で暮らしている。
キャロライン・アベンゼン
ホーソーンの妻。灰色の目をした赤茶色の髪のアイルランド系女性。
日本では1965年に川口正吉によって翻訳され、ハヤカワ・SF・シリーズ(早川書房)から刊行された。1984年から新たに浅倉久志による新訳版がハヤカワ文庫から出版された。
2015年、ドラマ化が発表され、同年11月からAmazonビデオにおいてドラマ『高い城の男』の配信が開始された。
概要
第二次世界大戦が枢軸国の勝利に終わり、大日本帝国とナチス・ドイツによって分割占領されている旧アメリカ合衆国領を舞台にした人間群像劇。
歴史改変SFでは珍しくない設定だが、作品内世界で「もしも連合国が枢軸国に勝利していたら」という歴史改変小説が流行しているという点と、東洋の占術(易経)が同じく流行していて、複数の人物が易経を指針として行動するという部分が独創的である。ディック自身も、本作のプロットを作る際に易経を利用している。後半になるにつれてディック特有の形而上学・哲学的な思索やメタフィクションが展開される一方、ディック作品にありがちなプロットの破綻が生じていない。そうした点からアメリカやイギリスなど英語圏ではディック作品の代表作として挙げられることも多い。
作中の枢軸国の描写に関してはそれぞれに違いがある。日本人は勝者として傲慢な部分もあるものの、人種政策でドイツと対立するなどある程度は話が通じる人間的な集団として描かれている。逆にドイツ人は反ナチ派が軒並み粛清されており、ナチズムの狂気に満ちた集団として描かれている。イタリア人は表面的には日独と並んで戦勝国として扱われているが実態としてはドイツの衛星国であり、その劣等感からアメリカ人に同情する描写が描かれている。また作品中に登場する歴史改変小説は、現実の第二次世界大戦とも異なった形で連合国が勝利する内容になっている。
1947年、第二次世界大戦は枢軸国の勝利に終わり、アメリカ合衆国は戦勝国であるドイツと日本によって三つの国に分断され、両国の分割統治下に置かれていた。それから15年後の1962年、アメリカ人の間では謎の人物「高い城の男」によって執筆された『イナゴ身重く横たわる』[5] という、「連合国が第二次世界大戦に勝利していたら」という仮想小説が流行していた。『イナゴ身重く横たわる』はドイツが支配するアメリカ合衆国およびヨーロッパでは発禁本に指定され、「高い城の男」は保安警察に命を狙われていた。
日本が支配するアメリカ太平洋岸連邦のサンフランシスコにあるアメリカ美術工芸品商会を経営する美術商ロバート・チルダンは、上得意先である田上信輔に、頼まれていた品物の手配が遅れていることを叱責され、代わりの品物を届けるために田上がいる通商代表部に向かう。一方、勤め先の工場をクビになったフランク・フリンクは、これからの指針を求めて易経に勤しんでいた。田上もまた、「取引相手である実業家バイネスの正体を探れ」という日本政府からの指令に悩み易経を頼みとしていた。
日本の影響下にあるロッキー山脈連邦のキャノン・シティに暮らすジュリアナ・フリンクは、合衆国から仕事でやって来たイタリア移民のジョー・チナデーラと出会い、成り行きで一夜を共にする。ジュリアナは、ジョーが持っていた『イナゴ身重く横たわる』に興味を持ち、「高い城の男」が住むシャイアンに共に行くことになる。その頃チルダンは、日本海軍の春沢提督の使者と名乗る男から「あなたが扱っている美術品は模造品だ」と告げられ面目を失い、取引相手であるキャルヴィンを問い詰める。一方で地元の新聞社に問い合わせた結果、提督の乗艦であると聞かされていた航空母艦翔鶴は戦時中にアメリカ軍の潜水艦によって沈められており、春沢提督なる人物も存在しないことが判明する。春沢提督の使者を騙る者の正体はフランクであり、友人のマッカーシーと組み、元上司で模造品の元締めのウインダム=マトスンから退職金を巻き上げる。
同じ頃、ドイツでは最高指導者のボルマン首相が死去したことでナチ党内部の権力闘争が激化し、アメリカにも影響が及び始める。一方、フランクとマッカーシーは、ウインダム=マトスンから巻き上げた退職金でエドフランク宝飾工房を起業し、自身の腕を活かした装身具を作り、その装身具をチルダンに売り付けようとするが、チルダンに言い包められ委託取引にされてしまう。装身具を手にしたチルダンは、それまで扱ってきた過去の遺物である骨董品とは違うアメリカの「未来」の姿を感じ、アメリカ人としての自信を取り戻す。
その頃、日本軍の手崎将軍から連絡を受けた田上は、バイネスをオフィスに呼び三者会談を行う。会談の中で、バイネスは自分がドイツ国防軍情報部のヴェゲナー大尉であることを明かし、ボルマン政権と、その後を継いだゲッベルス政権が対日核攻撃作戦「タンポポ(レーヴェンツァーン)作戦」を計画していることを語り、計画を阻止するため作戦反対派のハイドリヒに助力して欲しいと告げる。その時、バイネスの正体を掴んだ保安警察のメーレ将軍が送り込んだ工作員が現れ銃撃戦となるが、田上が工作員を射殺し事態を収束させる。手崎将軍は対応を協議するため日本に帰国し、任務を果たしたヴェゲナー大尉もドイツに帰国する。
「高い城の男」に会うための旅を続けていたジュリアナとジョーはデンヴァーに到着する。しかし、そこでジュリアナは、ジョーの正体が「高い城の男」暗殺のため派遣されたナチスの工作員だと気付き、ジョーを殺害しホテルを後にする。途方に暮れたジュリアナは易経を行い、その啓示に従い、「高い城の男」に命が狙われていることを知らせるためにシャイアンに向かう。
翌日、「高い城の男」ことホーソーン・アベンゼンの邸宅に到着したジュリアナは、ナチスの工作員が迫っていることを告げると同時に、何故『イナゴ身重く横たわる』を執筆したのかを尋ねる。ジュリアナの問いに対し、アベンゼンは「易経との契約に基づき書いた」と告白する。ジュリアナは、何故易経が『イナゴ身重く横たわる』を書かせたのかを知るため易経を行い、「真理」の答えを得る。ジュリアナは、『イナゴ身重く横たわる』の世界こそが真実の世界であると知り、アベンゼンに礼を言い邸宅を後にした。
登場人物
ロバート・チルダン
アメリカ太平洋岸連邦で「アメリカ美術工芸品商会」を経営する古美術商。日本人相手に歴史的な美術品を販売しているが、旧合衆国の歴史の浅さから100年ほど前の日用品やポスターなどを扱っている。
敗戦国民として日本人に対し卑屈な態度をとっていたが、エドフランク宝飾工房の装身具をきっかけにアメリカ人としての誇りを取り戻す。
フランク・フリンク
太平洋岸連邦の工芸職人。ユダヤ系アメリカ人。本名は「フランク・フィンク」。合衆国の軍人としてアメリカ本土決戦で枢軸軍と戦った過去を持つ。
終戦後も暫くはレジスタンスを続けていたが、占領統治が進むにつれて武器を捨てた。職人としての腕前は良いが人当たり悪く職場の工場をクビになっている。妻ともども易経に凝っている。
友人のマッカーシーに誘われ「エドフランク宝飾工房」を起業するが、チルダンに対する詐欺行為とユダヤ系の素性が発覚し逮捕される。その後、ドイツへの引き渡しを拒否した田上の計らいで釈放される。
ジュリアナ・フリンク
フランクの妻。美しい風貌をした黒髪の女性。フランクの貧しい生活に嫌気が差して別居、現在はロッキー山脈連邦のコロラド州キャノン・シティで、柔道の教師をしながら暮らしている。
『イナゴ身重く横たわる』の熱心な愛読者で、知り合ったジョーと共に作者の「高い城の男」に会おうと考えている。柔道の有段者で夫と同じく易経にも精通している。
ジョー・チナデーラ
イタリア国籍の退役軍人。北イタリアのミラノ出身。出稼ぎ目的の移民として合衆国に滞在しており、貨物運搬の用心棒としてロッキー山脈連邦を訪れた際にジュリアナと知り合う。浅黒い肌に黒い髪をした男性で、地中海人種的な風貌から東側の人種政策で差別されており、戦勝国出身にも拘らず『イナゴ身重く横たわる』の愛読者となっている。
ファシスト党少年団にも入っていた愛国者でロドルフォ・グラツィアーニの下で北アフリカ戦線に従軍し、エルヴィン・ロンメルからも二級鉄十字勲章を与えられている。正体はスイス出身のブランデンブルク隊工作員。北方人種風の風貌を隠し、密かにホーソーン・アベンゼンを追っていた。
田上信輔(たがみ のぶすけ)
原文では「Tagomi」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。太平洋岸連邦の第一通商代表団の代表を務める日本人官僚。日本政府からバイネスの素性を探ることを命令されている。易経を精神統一の手段としてしばしば用いている。
「タンポポ作戦」の詳細を聞き精神的に衰弱し、SDの通商代表部襲撃とフランクの引き渡し要求でライスと口論となり、心臓発作を起こし倒れる。
ポール・梶浦(ポール・かじうら)
原文では「Kasoura」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。太平洋岸連邦の不遇地域生活水準向上調査委員会の日本人職員。美術品愛好家で、チルダンの店の常連客。
ベティ・梶浦(ベティ・かじうら)
ポールの妻。浅黒い肌に艶やかな黒髪をした女性。
手崎(てざき)
原文では「Tedeki」であるため、浅倉訳版で姓が改変されている(川口訳版では原文のママ)。元日本軍参謀総長の老将軍。軍部の宇宙進出推進派。「矢田部信次郎」の偽名を使い、サンフランシスコを訪れる。
府馬五十雄(ふま いそお)
原文では「Ito(名)Humo(姓)」であるため、浅倉訳版で姓名が改変されている(川口訳版では原文のママ)。日本陸軍の退役少佐。旧アメリカ美術品の収集家で、4年前に古本屋を経営していたチルダンのもとを訪れ、彼の美術商への転身のきっかけを作る。
エフレイキアン
第一通商代表団オフィスの職員で、田上の秘書。背が高く、褐色の髪をしたアルメニア系の女性。
ラムジー
第一通商代表団オフィスの職員で、田上の秘書。アメリカ系白人の男性。
ルドルフ・ヴェゲナー
ドイツ国防軍情報部の大尉。ドイツ国内の要人の密命を受け、スウェーデン人実業家「バイネス」の偽名を使いサンフランシスコを訪れる。
ドイツに帰国後、国防軍と連携したSSに拘束される。
フーゴー・ライス
サンフランシスコ駐在ドイツ帝国領事を務める男爵。SS名誉少佐の階級を持ち、形式上メーレの指揮下にある。
ブルーノ・クロイツ・フォン・メーレ
太平洋岸連邦のSD地方長官。ハイドリヒ暗殺計画を阻止したことで目をかけられ、SD内での地位を確立する。
アレックス・ロッツェ
ドイツ人芸術家。個展を開くためサンフランシスコを訪れる。飛行機で隣席だったバイネスの「自分はユダヤ人だ」という冗談を真に受け、ドイツ領事館に「サンフランシスコにユダヤ人がいる」と密告する。
ウインダム=マトスン
WMコーポレーションの社長。フランクの雇い主。複数の企業の大株主であり、太平洋岸連邦の政府首脳部と繋がっている。
エド・マッカーシー
ウインダム=マストンが経営する工場の現場監督で、フランクの友人。フランクとともにエドフランク宝飾工房を起業する。
レイ・キャルヴィン
サンフランシスコで一・二を争う卸売業者。ウインダム=マストンが製造する模造品を取扱い、チルダンと取引をしている。
ホーソーン・アベンゼン
『イナゴ身重く横たわる』の作者。通称「高い城の男」。第二次世界大戦ではアメリカ海兵隊の軍曹としてイギリス戦線に従軍した。
現在はロッキー山脈連邦のシャイアンにある山奥の要塞(通称「高い城」)で暮らしている。
キャロライン・アベンゼン
ホーソーンの妻。灰色の目をした赤茶色の髪のアイルランド系女性。
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