18年7月期“最も質の高いドラマ”は『義母と娘のブルース』
オリコンによるエンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する質の高いドラマを表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」。18年7月期の主なドラマ及びクールをまたいで放送された計31作品を対象とした第13回目の「作品賞」には、桜沢鈴氏の同名4コマ漫画を原作とした、TBS系火曜ドラマ『義母と娘のブルース』が輝いた。
◆義母と娘らによる10年間の壮大な“ラブストーリー”
本作はキャリアウーマンの主人公・岩木亜希子(綾瀬はるか)が、ある日突然、小学生の娘を持つ男性・宮本良一(竹野内豊)からプロポーズをされ結婚。畑違いの家事や育児に全力投球で挑み、やがて本当の親子、本当の家族以上の絆を深めていく様子を描いた、ハートウォーミングな物語。ハプニングが次々と起こるわけではなく、あくまでも宮本家の日常にある喜び、悲しみを切り取った内容だが、そんなありふれた日常こそが美しく、ドラマチックであることを伝えている。
また本作は、一見ホームドラマでありながら、全編を通してみると壮大な愛を描いたラブストーリーでもある。10年間にわたって義母と娘らが築いた愛情は、女性の社会進出が進み多様化する現代の夫婦、家族の在り方に、「こんなカタチもあるよ」と提示してみせたようにも思える。
脚本を手がけたのは、日曜劇場『JIN -仁-』シリーズなど、綾瀬主演作をはじめ、数々のヒット作を送り出してきた森下佳子氏。4コマ漫画の原作から、どこか共感できる魅力的なキャラクター、心に響くセリフを紡ぎ出した。
◆ドラマ満足度&視聴率は、ともに右肩上がりで上昇
そして、本作の成功には、その愛情に満ちた物語の世界を体現したキャスト陣の力も非常に大きいと言えるだろう。主演の綾瀬は、サイボーグ的なキャリアウーマンから、徐々に母性に満ち溢れていく女性の心情の変化を細やかに表現。心優しい夫を演じた竹野内豊、“フーテンのダメ男”を演じた佐藤健。そして、娘・みゆきの成長をフラットに演じた上白石萌歌&横溝菜帆と、心情豊かな登場人物たちが物語に深みを与えた。
章立てした構成も奏功し、視聴者によるドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」では、初回67Ptからほぼ右肩上がりで推移し、最終回は95Ptをマーク(100Pt満点)。視聴率もぐんぐん上昇し、最終回では平均視聴率19.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録、数字的な面でも大成功。チーム力で奏でた“ブルース”が視聴者の心を捉えた。なお、本作のプロデュースを手がけた飯田和孝氏の受賞コメントは以下のとおり。
■作品賞:火曜ドラマ『義母と娘のブルース』飯田和孝プロデューサー
スタッフ・キャストなど関わった全員の頑張りで、作品賞を受賞できたことは素直に嬉しく思います。原作の4コマ漫画を初めて読んだ時、人物の感情が豊かで、とてもダイナミックな展開に心を動かされました。『義母と娘のブルース』はホームドラマではありますが、義母と娘と支える人間たちの10年間の“ラブストーリー”だと考え制作しました。そこに綾瀬はるかさん演じる義母・亜希子の“一生懸命すぎるキャラクター”がドラマにスパイスを加えたと思っています。スタッフ、キャストが“一生懸命”をモットーに、丁寧に繊細に作ったドラマが視聴者の皆様に共感していただけたことは本当に嬉しく思います。
※飯田氏のほか、同作プロデュースは中井芳彦氏、大形美佑葵氏も担当
「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」とは
オリコンのグループ会社oriconMEが発行する、週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する「質の高いドラマ」を表彰する賞。視聴者の評価は、『コンフィデンス』が毎週、約700名を対象に調査しているドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」の累積平均データを使用。審査員の投票結果と合計したうえで、最終的には有識者18名による審査会で決定する。
https://t.cn/EZJFqmO
オリコンによるエンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する質の高いドラマを表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」。18年7月期の主なドラマ及びクールをまたいで放送された計31作品を対象とした第13回目の「作品賞」には、桜沢鈴氏の同名4コマ漫画を原作とした、TBS系火曜ドラマ『義母と娘のブルース』が輝いた。
◆義母と娘らによる10年間の壮大な“ラブストーリー”
本作はキャリアウーマンの主人公・岩木亜希子(綾瀬はるか)が、ある日突然、小学生の娘を持つ男性・宮本良一(竹野内豊)からプロポーズをされ結婚。畑違いの家事や育児に全力投球で挑み、やがて本当の親子、本当の家族以上の絆を深めていく様子を描いた、ハートウォーミングな物語。ハプニングが次々と起こるわけではなく、あくまでも宮本家の日常にある喜び、悲しみを切り取った内容だが、そんなありふれた日常こそが美しく、ドラマチックであることを伝えている。
また本作は、一見ホームドラマでありながら、全編を通してみると壮大な愛を描いたラブストーリーでもある。10年間にわたって義母と娘らが築いた愛情は、女性の社会進出が進み多様化する現代の夫婦、家族の在り方に、「こんなカタチもあるよ」と提示してみせたようにも思える。
脚本を手がけたのは、日曜劇場『JIN -仁-』シリーズなど、綾瀬主演作をはじめ、数々のヒット作を送り出してきた森下佳子氏。4コマ漫画の原作から、どこか共感できる魅力的なキャラクター、心に響くセリフを紡ぎ出した。
◆ドラマ満足度&視聴率は、ともに右肩上がりで上昇
そして、本作の成功には、その愛情に満ちた物語の世界を体現したキャスト陣の力も非常に大きいと言えるだろう。主演の綾瀬は、サイボーグ的なキャリアウーマンから、徐々に母性に満ち溢れていく女性の心情の変化を細やかに表現。心優しい夫を演じた竹野内豊、“フーテンのダメ男”を演じた佐藤健。そして、娘・みゆきの成長をフラットに演じた上白石萌歌&横溝菜帆と、心情豊かな登場人物たちが物語に深みを与えた。
章立てした構成も奏功し、視聴者によるドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」では、初回67Ptからほぼ右肩上がりで推移し、最終回は95Ptをマーク(100Pt満点)。視聴率もぐんぐん上昇し、最終回では平均視聴率19.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録、数字的な面でも大成功。チーム力で奏でた“ブルース”が視聴者の心を捉えた。なお、本作のプロデュースを手がけた飯田和孝氏の受賞コメントは以下のとおり。
■作品賞:火曜ドラマ『義母と娘のブルース』飯田和孝プロデューサー
スタッフ・キャストなど関わった全員の頑張りで、作品賞を受賞できたことは素直に嬉しく思います。原作の4コマ漫画を初めて読んだ時、人物の感情が豊かで、とてもダイナミックな展開に心を動かされました。『義母と娘のブルース』はホームドラマではありますが、義母と娘と支える人間たちの10年間の“ラブストーリー”だと考え制作しました。そこに綾瀬はるかさん演じる義母・亜希子の“一生懸命すぎるキャラクター”がドラマにスパイスを加えたと思っています。スタッフ、キャストが“一生懸命”をモットーに、丁寧に繊細に作ったドラマが視聴者の皆様に共感していただけたことは本当に嬉しく思います。
※飯田氏のほか、同作プロデュースは中井芳彦氏、大形美佑葵氏も担当
「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」とは
オリコンのグループ会社oriconMEが発行する、週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する「質の高いドラマ」を表彰する賞。視聴者の評価は、『コンフィデンス』が毎週、約700名を対象に調査しているドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」の累積平均データを使用。審査員の投票結果と合計したうえで、最終的には有識者18名による審査会で決定する。
https://t.cn/EZJFqmO
打電話向詢問LOTTE。Ghana文件夾的事宜。
雖然22日才開始,但已經有店家開始了。
即使有実施企業,但也因地域的不同而有所變化。
以及,根據店舗的不同,也有沒実施活動的地方。
在首都圏是:イオン、ヨーカドー、ダイエー関東、ライフ、サミット、いなげや、クリエイト、サンドラッグ、オリンピック、ユーコープ、コモディ、ユニー、マミーマート、スーパーバリュー、其他,並非全部店舗都有實施文件夾活動。
還是必須向店舗確認才行
雖然22日才開始,但已經有店家開始了。
即使有実施企業,但也因地域的不同而有所變化。
以及,根據店舗的不同,也有沒実施活動的地方。
在首都圏是:イオン、ヨーカドー、ダイエー関東、ライフ、サミット、いなげや、クリエイト、サンドラッグ、オリンピック、ユーコープ、コモディ、ユニー、マミーマート、スーパーバリュー、其他,並非全部店舗都有實施文件夾活動。
還是必須向店舗確認才行
自存上海月亮一个人自聊[给力]
この芝居は、“ 人間と人間の信頼 ”、“ 基本的な人間のあり方 ”と、ああいう時代に日本人がやっていた“日本人の可能性”を信じて書かれています。自分がこの芝居を書いて思うのは、「○○人だから...とか△△人だから...ダメ」
ということはないということです。ーーー 井上ひさし。
2018年春、こまつ座と世田谷パブリックシアターの新たな共同制作作品として、井上ひさし中期の名作『シャンハイムーン』が上演される。2012、15年に上演した『藪原検校』に次ぐシリーズ第2弾。『阿Q正伝』『狂人日記』などで知られる中国の偉大な文学者にして、文学革命、思想革命の指導者でもあった魯迅。舞台は1934年、蒋介石の国民党政府からの逮捕令により追われる身となった魯迅と、彼を敬い匿った日本人たちのある1ヶ月間を描いた物語だ。栗山民也による待望の新演出のもと前作同様、主演を野村萬斎が務めるほか、その妻・許広平役に5年ぶりの舞台出演となる広末涼子が挑む。兵庫公演に先立ち、野村萬斎が作品への思いを語った。
野村萬斎
「親切は巡りめぐって返ってくる、愛情の原点が描かれた気持ちの良い作品です」
ーーシリーズ第2弾は『シャンハイムーン』に決定しました。
第1弾の『藪原検校』では、最貧困の盲目の少年が最高位の検校にまで成り上がる非情なる悪漢を演じさせていただき、好評をいただきました。味をしめての第2弾です(笑)。前回は17~27歳までの若い血流が渦巻いていましたが、今回はコンパクトに充実感のある“中年の話”。……というと、若い人が観に来なくなるからやめようかな(笑)。魯迅最晩年の話でもあり人生の終焉にさしかかり、生きてきたことに対する反目、煩悶、葛藤を描く作品になるのかな。日中の話の中に身を置いて、日本や隣の国のことについて考えるのはオリンピックを前にとても良い作品なのではないかとチョイスしました。
魯迅は、植民地支配下の中国で特権的に暮らす日本人の本屋に匿われる中国人という非常にややこしい立場なのですが、不思議なことに日本に対して非常に愛着を持っている。留学もしている。でも日本という国は嫌いという。いまの時代も国同士は緊張感を持ちつつも、日本に溢れかえるツーリストの姿を見ていると、個人同士ではそうでもないんじゃないかというギャップみたいなことを、現代的な問題としてこの作品にも映し出せるのではないかな。とはいえ、国家やアイデンティティのことばかりではなく、さすがは井上作品ですから抱腹絶倒なところもあるわけで。そこも単なるドタバタ喜劇ではなく緻密に伏線が張られている。魯迅が途中で失語症になって、単語を取り違えて発してしまう症状を引き起こしたりとか、色んな仕掛けがあって、そこから本心が炙り出されてしまうという傑作だと思います。
野村萬斎
ーー魯迅の妻・許広平を、広末涼子さんが務めることも話題です。
すでにお子さんもいらっしゃるのに、あの透明感は素晴らしいと思います。妻・許広平は魯迅より年若い教え子でありながら、実際的な奥さんですね。じつは魯迅には本当の奥さんがいて、数十年前に1週間程度しか一緒にいなかったその妻に実家のお母さんの介護を押し付けて、自分は許広平と一緒に上海に来ている。魯迅といえば聖人のような扱われ方ですが、実際は虫歯だらけで不摂生を繰り返し、表裏にいろいろな愛憎があった人。重味と軽味のバランスが非常によくできているお芝居だなと。その他のキャラクターにもそれぞれの裏話と生きざまが見えてくる、非情に緻密な作品です。
ーー現時点で魯迅をどう演じたいとお考えですか。
魯迅は表裏一体なものを抱えながらも、志に燃える人間だったと思うんですね。それは井上作品の魅力でもあると思います。志と現実という中に、人間は表裏一体なものを抱え、その複雑さにこまつ座ファンは惹かれるのだろうと。ここに出てくる本屋さんも実在したと聞きますし、たった一人の中国人作家のために、こんなにも一生懸命になれる日本人がいたってことに感銘を受けます。国同士ではなく、個人としてどれだけ好きかってことであり、魯迅としては愛されキャラじゃないといけないなと思います。
野村萬斎
ーー魯迅の失語症による言葉遊びが出てきたり、コミカルな演出は物語にどんな効果をもたらすのでしょう。
可笑しいだけではつまらないので、その中にも苦悶する人間が出てくるんだろうなと思います。言葉遊びをするには、まず台詞を覚えるのが大変で、失語症の場面でも濁点が入るとか、面倒臭い覚え方になるわけですよ。それを頑張ってやっていると、そこに面白さと意味が出てくる。ミラクルな場面がいくつもで出てくると思うので、期待していただきたいです。ライブならではの熱気というのは栗山さんもお好きな方で、なんと言っても小沢昭一さんの付き人をしていた方なので。ご自身も中学生の頃にギターのコンテストで優勝したり、非常にオタッキーな方でもあるので(笑)。遊びの部分をどう作っていくのかは、栗山さんご自身が楽しみにされていると思います。
ーー本作について井上さんは「基本的な人間のあり方を信じている」作品だとコメントされています。
恩と感謝が全体的に貫かれている気がしますね。作家のファンであり人道的に匿う日本人の本屋に魯迅も恩を感じる。そこに愛情の原点というものがあって、それは国の思想なんかを超越するんだと。最後に感動的なエピソードも出てきますし、恨みで終わるのではなく、色んな親切や愛情が巡りめぐって自分に返ってくる、非常に気持ちの良いお話ですね。
「中年は何かを振り返るチャンス、若い人はこれから生きる上で面白い作品になると思う」
ーー伝統芸能を軸足に舞台や映像など多方面でご活躍です。原動力の源とは?
アイデンティティをどう証明していくか、ということだと思います。能狂言がどんなに優れていると言われても、観てくださるファンの方に認められることで、我々のアイデンティティは確立されるので。やはりたくさんの方に知っていただき、他ジャンルとも見比べていただきたい。能狂言だけやっていれば十分だという方もいらっしゃるでしょうし、でも僕らは祖父の代から狂言は他ジャンルに拮抗しうることを証明したいという思いがあります。そうしたときに他のジャンルや空間、現代劇の役者さんとやることで、我々のアドバンテージもあれば、逆にナチュラルな芝居とは違う我々の様式性をどう緩めて近づけていけるのか。まさに『シャンハイムーン』でもそこが試されるのだと思います。
野村萬斎
ーー様式性を緩める、ですか。
能狂言は様式美ですが、それも中身がないと始まらない。そこは型が先か中身が先かの違いで(他ジャンルと)変わらない。内なる充実を意識するために外に出て、色んな演出家と出会い演技術を見ることは非常に勉強になります。第一人者とやるのは自分を強くしますよね。やっぱり自分の芸のためには、自分より上手い人とやらないとダメですね。
ーー現代劇の経験も、最後は狂言に還元されていく。
そうだと思いますね。例えばいまの若い人のなかにも、華があると言われる人は確かに吸引力がある。そうしたときに、自分は違う方法で舞台に立ち向かって存在しないといけない。世阿弥の言葉に「時分の花」というのがありますが、年相応の花を咲かせていくという意味で、いま50代の僕は先輩方を見ながら60代、70代での演技というものを少しずつ勉強しているところ。80代の親父さんの芸を、いまの僕がやっても意味のないことですからね。そういう違いを意識しながら日々勉強と思っています。
野村萬斎野村萬斎
ーー最後に、冒頭で「中年の話」というご紹介もありましたが、同世代の方にはどのように作品を楽しんでいただきたいですか。
あんまり中年の話には括りたくないのですが(苦笑)。皆さんもどうなんですかね。20、30代は大学を卒業して一生懸命就職して、とりあえず生きていく。ある意味“勢いで生きる!”みたいなところがあって、ふと40歳を迎えたあたりから志と現実というところで、今までの生き方がどうであったかを立ち返る瞬間がある。そこで、正しいかは分からないけれど、ちょっと変えてみようとかと思ったり。皆さんも色々と感じられるんじゃないでしょうか。
惑わぬ人もいれば、惑う人も絶対いると思う。僕自身、最近になってやっと惑わなくなりました。以前は、能狂言のアイデンティティが証明しきれなくなるんじゃないかと諦めそうになったり、このまま役者業に進んだ方がいいんじゃないかとか、思わなくもなかったですから。やっぱり突っ走ってきた所から一息ついた時に、「何だったんだろうな?」となにかを振り返るチャンスになるかもしれませんね。……でもやっぱり、若い人にも観ていただきたいです(笑)! ちょっと先の話かもしれませんがこれから生きていく上で、きっと面白い作品になると思います。
野村萬斎
この芝居は、“ 人間と人間の信頼 ”、“ 基本的な人間のあり方 ”と、ああいう時代に日本人がやっていた“日本人の可能性”を信じて書かれています。自分がこの芝居を書いて思うのは、「○○人だから...とか△△人だから...ダメ」
ということはないということです。ーーー 井上ひさし。
2018年春、こまつ座と世田谷パブリックシアターの新たな共同制作作品として、井上ひさし中期の名作『シャンハイムーン』が上演される。2012、15年に上演した『藪原検校』に次ぐシリーズ第2弾。『阿Q正伝』『狂人日記』などで知られる中国の偉大な文学者にして、文学革命、思想革命の指導者でもあった魯迅。舞台は1934年、蒋介石の国民党政府からの逮捕令により追われる身となった魯迅と、彼を敬い匿った日本人たちのある1ヶ月間を描いた物語だ。栗山民也による待望の新演出のもと前作同様、主演を野村萬斎が務めるほか、その妻・許広平役に5年ぶりの舞台出演となる広末涼子が挑む。兵庫公演に先立ち、野村萬斎が作品への思いを語った。
野村萬斎
「親切は巡りめぐって返ってくる、愛情の原点が描かれた気持ちの良い作品です」
ーーシリーズ第2弾は『シャンハイムーン』に決定しました。
第1弾の『藪原検校』では、最貧困の盲目の少年が最高位の検校にまで成り上がる非情なる悪漢を演じさせていただき、好評をいただきました。味をしめての第2弾です(笑)。前回は17~27歳までの若い血流が渦巻いていましたが、今回はコンパクトに充実感のある“中年の話”。……というと、若い人が観に来なくなるからやめようかな(笑)。魯迅最晩年の話でもあり人生の終焉にさしかかり、生きてきたことに対する反目、煩悶、葛藤を描く作品になるのかな。日中の話の中に身を置いて、日本や隣の国のことについて考えるのはオリンピックを前にとても良い作品なのではないかとチョイスしました。
魯迅は、植民地支配下の中国で特権的に暮らす日本人の本屋に匿われる中国人という非常にややこしい立場なのですが、不思議なことに日本に対して非常に愛着を持っている。留学もしている。でも日本という国は嫌いという。いまの時代も国同士は緊張感を持ちつつも、日本に溢れかえるツーリストの姿を見ていると、個人同士ではそうでもないんじゃないかというギャップみたいなことを、現代的な問題としてこの作品にも映し出せるのではないかな。とはいえ、国家やアイデンティティのことばかりではなく、さすがは井上作品ですから抱腹絶倒なところもあるわけで。そこも単なるドタバタ喜劇ではなく緻密に伏線が張られている。魯迅が途中で失語症になって、単語を取り違えて発してしまう症状を引き起こしたりとか、色んな仕掛けがあって、そこから本心が炙り出されてしまうという傑作だと思います。
野村萬斎
ーー魯迅の妻・許広平を、広末涼子さんが務めることも話題です。
すでにお子さんもいらっしゃるのに、あの透明感は素晴らしいと思います。妻・許広平は魯迅より年若い教え子でありながら、実際的な奥さんですね。じつは魯迅には本当の奥さんがいて、数十年前に1週間程度しか一緒にいなかったその妻に実家のお母さんの介護を押し付けて、自分は許広平と一緒に上海に来ている。魯迅といえば聖人のような扱われ方ですが、実際は虫歯だらけで不摂生を繰り返し、表裏にいろいろな愛憎があった人。重味と軽味のバランスが非常によくできているお芝居だなと。その他のキャラクターにもそれぞれの裏話と生きざまが見えてくる、非情に緻密な作品です。
ーー現時点で魯迅をどう演じたいとお考えですか。
魯迅は表裏一体なものを抱えながらも、志に燃える人間だったと思うんですね。それは井上作品の魅力でもあると思います。志と現実という中に、人間は表裏一体なものを抱え、その複雑さにこまつ座ファンは惹かれるのだろうと。ここに出てくる本屋さんも実在したと聞きますし、たった一人の中国人作家のために、こんなにも一生懸命になれる日本人がいたってことに感銘を受けます。国同士ではなく、個人としてどれだけ好きかってことであり、魯迅としては愛されキャラじゃないといけないなと思います。
野村萬斎
ーー魯迅の失語症による言葉遊びが出てきたり、コミカルな演出は物語にどんな効果をもたらすのでしょう。
可笑しいだけではつまらないので、その中にも苦悶する人間が出てくるんだろうなと思います。言葉遊びをするには、まず台詞を覚えるのが大変で、失語症の場面でも濁点が入るとか、面倒臭い覚え方になるわけですよ。それを頑張ってやっていると、そこに面白さと意味が出てくる。ミラクルな場面がいくつもで出てくると思うので、期待していただきたいです。ライブならではの熱気というのは栗山さんもお好きな方で、なんと言っても小沢昭一さんの付き人をしていた方なので。ご自身も中学生の頃にギターのコンテストで優勝したり、非常にオタッキーな方でもあるので(笑)。遊びの部分をどう作っていくのかは、栗山さんご自身が楽しみにされていると思います。
ーー本作について井上さんは「基本的な人間のあり方を信じている」作品だとコメントされています。
恩と感謝が全体的に貫かれている気がしますね。作家のファンであり人道的に匿う日本人の本屋に魯迅も恩を感じる。そこに愛情の原点というものがあって、それは国の思想なんかを超越するんだと。最後に感動的なエピソードも出てきますし、恨みで終わるのではなく、色んな親切や愛情が巡りめぐって自分に返ってくる、非常に気持ちの良いお話ですね。
「中年は何かを振り返るチャンス、若い人はこれから生きる上で面白い作品になると思う」
ーー伝統芸能を軸足に舞台や映像など多方面でご活躍です。原動力の源とは?
アイデンティティをどう証明していくか、ということだと思います。能狂言がどんなに優れていると言われても、観てくださるファンの方に認められることで、我々のアイデンティティは確立されるので。やはりたくさんの方に知っていただき、他ジャンルとも見比べていただきたい。能狂言だけやっていれば十分だという方もいらっしゃるでしょうし、でも僕らは祖父の代から狂言は他ジャンルに拮抗しうることを証明したいという思いがあります。そうしたときに他のジャンルや空間、現代劇の役者さんとやることで、我々のアドバンテージもあれば、逆にナチュラルな芝居とは違う我々の様式性をどう緩めて近づけていけるのか。まさに『シャンハイムーン』でもそこが試されるのだと思います。
野村萬斎
ーー様式性を緩める、ですか。
能狂言は様式美ですが、それも中身がないと始まらない。そこは型が先か中身が先かの違いで(他ジャンルと)変わらない。内なる充実を意識するために外に出て、色んな演出家と出会い演技術を見ることは非常に勉強になります。第一人者とやるのは自分を強くしますよね。やっぱり自分の芸のためには、自分より上手い人とやらないとダメですね。
ーー現代劇の経験も、最後は狂言に還元されていく。
そうだと思いますね。例えばいまの若い人のなかにも、華があると言われる人は確かに吸引力がある。そうしたときに、自分は違う方法で舞台に立ち向かって存在しないといけない。世阿弥の言葉に「時分の花」というのがありますが、年相応の花を咲かせていくという意味で、いま50代の僕は先輩方を見ながら60代、70代での演技というものを少しずつ勉強しているところ。80代の親父さんの芸を、いまの僕がやっても意味のないことですからね。そういう違いを意識しながら日々勉強と思っています。
野村萬斎野村萬斎
ーー最後に、冒頭で「中年の話」というご紹介もありましたが、同世代の方にはどのように作品を楽しんでいただきたいですか。
あんまり中年の話には括りたくないのですが(苦笑)。皆さんもどうなんですかね。20、30代は大学を卒業して一生懸命就職して、とりあえず生きていく。ある意味“勢いで生きる!”みたいなところがあって、ふと40歳を迎えたあたりから志と現実というところで、今までの生き方がどうであったかを立ち返る瞬間がある。そこで、正しいかは分からないけれど、ちょっと変えてみようとかと思ったり。皆さんも色々と感じられるんじゃないでしょうか。
惑わぬ人もいれば、惑う人も絶対いると思う。僕自身、最近になってやっと惑わなくなりました。以前は、能狂言のアイデンティティが証明しきれなくなるんじゃないかと諦めそうになったり、このまま役者業に進んだ方がいいんじゃないかとか、思わなくもなかったですから。やっぱり突っ走ってきた所から一息ついた時に、「何だったんだろうな?」となにかを振り返るチャンスになるかもしれませんね。……でもやっぱり、若い人にも観ていただきたいです(笑)! ちょっと先の話かもしれませんがこれから生きていく上で、きっと面白い作品になると思います。
野村萬斎
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