一夜(下)
夏目漱石

「蜜を含んで針を吹く」と一人が評すると
「ビステキの化石を食わせるぞ」と一人が云う。
「造り花なら蘭麝らんじゃでも焚たき込めばなるまい」これは女の申し分だ。三人が三様さんようの解釈をしたが、三様共すこぶる解しにくい。
「珊瑚さんごの枝は海の底、薬を飲んで毒を吐く軽薄の児じ」と言いかけて吾に帰りたる髯が「それそれ。合奏より夢の続きが肝心かんじんじゃ。――画から抜けだした女の顔は……」とばかりで口ごもる。
「描えがけども成らず、描けども成らず」と丸き男は調子をとりて軽く銀椀ぎんわんを叩たたく。葛餅を獲えたる蟻はこの響きに度を失して菓子椀の中を右左みぎひだりへ馳かけ廻る。
「蟻の夢が醒さめました」と女は夢を語る人に向って云う。
「蟻の夢は葛餅か」と相手は高からぬほどに笑う。
「抜け出ぬか、抜け出ぬか」としきりに菓子器を叩くは丸い男である。
「画から女が抜け出るより、あなたが画になる方が、やさしゅう御座んしょ」と女はまた髯にきく。
「それは気がつかなんだ、今度からは、こちが画になりましょ」と男は平気で答える。
「蟻も葛餅にさえなれば、こんなに狼狽うろたえんでも済む事を」と丸い男は椀をうつ事をやめて、いつの間にやら葉巻を鷹揚おうようにふかしている。
 五月雨さみだれに四尺伸びたる女竹めだけの、手水鉢ちょうずばちの上に蔽おおい重なりて、余れる一二本は高く軒に逼せまれば、風誘うたびに戸袋をすって椽えんの上にもはらはらと所択えらばず緑りを滴したたらす。「あすこに画がある」と葉巻の煙をぷっとそなたへ吹きやる。
 床柱とこばしらに懸かけたる払子ほっすの先には焚たき残る香こうの煙りが染しみ込んで、軸は若冲じゃくちゅうの蘆雁ろがんと見える。雁かりの数は七十三羽、蘆あしは固もとより数えがたい。籠かごランプの灯ひを浅く受けて、深さ三尺の床とこなれば、古き画のそれと見分けのつかぬところに、あからさまならぬ趣おもむきがある。「ここにも画が出来る」と柱に靠よれる人が振り向きながら眺ながめる。
女は洗えるままの黒髪を肩に流して、丸張りの絹団扇きぬうちわを軽かろく揺ゆるがせば、折々は鬢びんのあたりに、そよと乱るる雲の影、収まれば淡き眉まゆの常よりもなお晴れやかに見える。桜の花を砕いて織り込める頬の色に、春の夜の星を宿せる眼を涼しく見張りて「私わたしも画えになりましょか」と云う。はきと分らねど白地に葛くずの葉を一面に崩して染め抜きたる浴衣ゆかたの襟えりをここぞと正せば、暖かき大理石にて刻きざめるごとき頸筋くびすじが際立きわだちて男の心を惹ひく。
「そのまま、そのまま、そのままが名画じゃ」と一人が云うと
「動くと画が崩れます」と一人が注意する。
「画になるのもやはり骨が折れます」と女は二人の眼を嬉しがらしょうともせず、膝に乗せた右手をいきなり後うしろへ廻まわして体をどうと斜めに反そらす。丈たけ長き黒髪がきらりと灯ひを受けて、さらさらと青畳に障さわる音さえ聞える。
「南無三、好事こうず魔多し」と髯ある人が軽かろく膝頭を打つ。「刹那せつなに千金を惜しまず」と髯なき人が葉巻の飲のみ殻がらを庭先へ抛たたきつける。隣りの合奏はいつしかやんで、樋ひを伝う雨点うてんの音のみが高く響く。蚊遣火かやりびはいつの間まにやら消えた。
「夜もだいぶ更ふけた」
「ほととぎすも鳴かぬ」
「寝ましょか」
 夢の話しはつい中途で流れた。三人は思い思いに臥床ふしどに入る。
 三十分の後のち彼らは美くしき多くの人の……と云う句も忘れた。ククーと云う声も忘れた。蜜を含んで針を吹く隣りの合奏も忘れた、蟻の灰吹はいふきを攀よじ上のぼった事も、蓮はすの葉に下りた蜘蛛くもの事も忘れた。彼らはようやく太平に入る。
 すべてを忘れ尽したる後女はわがうつくしき眼と、うつくしき髪の主ぬしである事を忘れた。一人の男は髯のある事を忘れた。他の一人は髯のない事を忘れた。彼らはますます太平である。
 昔むかし阿修羅あしゅらが帝釈天たいしゃくてんと戦って敗れたときは、八万四千の眷属けんぞくを領して藕糸孔中ぐうしこうちゅうに入いって蔵かくれたとある。維摩ゆいまが方丈の室に法を聴ける大衆は千か万かその数を忘れた。胡桃くるみの裏うちに潜ひそんで、われを尽大千世界じんだいせんせかいの王とも思わんとはハムレットの述懐と記憶する。粟粒芥顆ぞくりゅうかいかのうちに蒼天そうてんもある、大地もある。一世いっせい師に問うて云う、分子ぶんしは箸はしでつまめるものですかと。分子はしばらく措おく。天下は箸の端さきにかかるのみならず、一たび掛け得れば、いつでも胃の中に収まるべきものである。
 また思う百年は一年のごとく、一年は一刻のごとし。一刻を知ればまさに人生を知る。日は東より出でて必ず西に入る。月は盈みつればかくる。いたずらに指を屈して白頭に到いたるものは、いたずらに茫々ぼうぼうたる時に身神を限らるるを恨うらむに過ぎぬ。日月は欺あざむくとも己れを欺くは智者とは云われまい。一刻に一刻を加うれば二刻と殖ふえるのみじゃ。蜀川しょくせん十様の錦、花を添えて、いくばくの色をか変ぜん。
八畳の座敷に髯のある人と、髯のない人と、涼しき眼の女が会して、かくのごとく一夜いちやを過した。彼らの一夜を描えがいたのは彼らの生涯しょうがいを描いたのである。
 なぜ三人が落ち合った? それは知らぬ。三人はいかなる身分と素性すじょうと性格を有する? それも分らぬ。三人の言語動作を通じて一貫した事件が発展せぬ? 人生を書いたので小説をかいたのでないから仕方がない。なぜ三人とも一時に寝た? 三人とも一時に眠くなったからである。

夏目漱石(なつめ そうせき,1867年2月9日~1916年12月9日),本名夏目金之助,笔名漱石,取自“漱石枕流”(《晋书》孙楚语)[1],日本近代作家,毕业于东京大学英文科[7]。夏目漱石在日本近代文学史上享有很高的地位,被称为“国民大作家”。他对东西方的文化均有很高造诣,既是英文学者,又精擅俳句、汉诗和书法。写小说时他擅长运用对句、迭句、幽默的语言和新颖的形式。他对个人心理的描写精确细微,开启了后世私小说的风气之先。他的门下出了不少文人,芥川龙之介也曾受他提携。他一生坚持对明治社会的批判态度。1916年12月9日,夏目漱石因病去世。

一夜(上)
夏目漱石

「美くしき多くの人の、美くしき多くの夢を……」と髯ひげある人が二たび三たび微吟びぎんして、あとは思案の体ていである。灯ひに写る床柱とこばしらにもたれたる直なおき背せの、この時少しく前にかがんで、両手に抱いだく膝頭ひざがしらに険けわしき山が出来る。佳句かくを得て佳句を続つぎ能あたわざるを恨うらみてか、黒くゆるやかに引ける眉まゆの下より安からぬ眼の色が光る。
「描えがけども成らず、描けども成らず」と椽えんに端居はしいして天下晴れて胡坐あぐらかけるが繰り返す。兼ねて覚えたる禅語ぜんごにて即興なれば間に合わすつもりか。剛こわき髪を五分ぶに刈りて髯貯たくわえぬ丸顔を傾けて「描けども、描けども、夢なれば、描けども、成りがたし」と高らかに誦じゅし了おわって、からからと笑いながら、室へやの中なる女を顧かえりみる。
 竹籠たけかごに熱き光りを避けて、微かすかにともすランプを隔てて、右手に違い棚、前は緑り深き庭に向えるが女である。
「画家ならば絵にもしましょ。女ならば絹を枠わくに張って、縫いにとりましょ」と云いながら、白地の浴衣ゆかたに片足をそと崩くずせば、小豆皮あずきがわの座布団ざぶとんを白き甲が滑すべり落ちて、なまめかしからぬほどは艶えんなる居ずまいとなる。
「美しき多くの人の、美しき多くの夢を……」と膝ひざ抱いだく男が再び吟じ出すあとにつけて「縫いにやとらん。縫いとらば誰に贈らん。贈らん誰に」と女は態わざとらしからぬ様さまながらちょと笑う。やがて朱塗の団扇うちわの柄えにて、乱れかかる頬ほおの黒髪をうるさしとばかり払えば、柄えの先につけたる紫のふさが波を打って、緑り濃き香油の薫かおりの中に躍おどり入る。
「我に贈れ」と髯なき人が、すぐ言い添えてまたからからと笑う。女の頬には乳色の底から捕えがたき笑の渦うずが浮き上って、瞼まぶたにはさっと薄き紅くれないを溶とく。
「縫えばどんな色で」と髯あるは真面目まじめにきく。
「絹買えば白き絹、糸買えば銀の糸、金の糸、消えなんとする虹にじの糸、夜と昼との界さかいなる夕暮の糸、恋の色、恨うらみの色は無論ありましょ」と女は眼をあげて床柱とこばしらの方を見る。愁うれいを溶といて錬ねり上げし珠たまの、烈はげしき火には堪たえぬほどに涼しい。愁の色は昔むかしから黒である。
 隣へ通う路次ろじを境に植え付けたる四五本の檜ひのきに雲を呼んで、今やんだ五月雨さみだれがまたふり出す。丸顔の人はいつか布団ふとんを捨てて椽えんより両足をぶら下げている。「あの木立こだちは枝を卸おろした事がないと見える。梅雨つゆもだいぶ続いた。よう飽きもせずに降るの」と独ひとり言ごとのように言いながら、ふと思い出した体ていにて、吾わが膝頭ひざがしらを丁々ちょうちょうと平手をたてに切って敲たたく。「脚気かっけかな、脚気かな」
 残る二人は夢の詩か、詩の夢か、ちょと解しがたき話しの緒いとぐちをたぐる。
「女の夢は男の夢よりも美くしかろ」と男が云えば「せめて夢にでも美くしき国へ行かねば」とこの世は汚けがれたりと云える顔つきである。「世の中が古くなって、よごれたか」と聞けば「よごれました」と※(「糸+丸」、第3水準1-89-90)扇がんせんに軽かろく玉肌ぎょっきを吹く。「古き壺つぼには古き酒があるはず、味あじわいたまえ」と男も鵞鳥がちょうの翼はねを畳たたんで紫檀したんの柄えをつけたる羽団扇はうちわで膝のあたりを払う。「古き世に酔えるものなら嬉うれしかろ」と女はどこまでもすねた体である。
この時「脚気かな、脚気かな」としきりにわが足を玩もてあそべる人、急に膝頭をうつ手を挙あげて、叱しっと二人を制する。三人の声が一度に途切れる間をククーと鋭どき鳥が、檜の上枝うわえだを掠かすめて裏の禅寺の方へ抜ける。ククー。
「あの声がほととぎすか」と羽団扇を棄すててこれも椽側えんがわへ這はい出す。見上げる軒端のきばを斜めに黒い雨が顔にあたる。脚気を気にする男は、指を立てて坤ひつじさるの方かたをさして「あちらだ」と云う。鉄牛寺てつぎゅうじの本堂の上あたりでククー、ククー。
「一声ひとこえでほととぎすだと覚さとる。二声で好い声だと思うた」と再び床柱に倚よりながら嬉しそうに云う。この髯男は杜鵑ほととぎすを生れて初めて聞いたと見える。「ひと目見てすぐ惚ほれるのも、そんな事でしょか」と女が問をかける。別に恥はずかしと云う気色けしきも見えぬ。五分刈ごぶがりは向き直って「あの声は胸がすくよだが、惚れたら胸は痞つかえるだろ。惚れぬ事。惚れぬ事……。どうも脚気らしい」と拇指おやゆびで向脛むこうずねへ力穴ちからあなをあけて見る。「九仞きゅうじんの上に一簣いっきを加える。加えぬと足らぬ、加えると危あやうい。思う人には逢あわぬがましだろ」と羽団扇はうちわがまた動く。「しかし鉄片が磁石に逢おうたら?」「はじめて逢うても会釈えしゃくはなかろ」と拇指の穴を逆さかに撫なでて澄ましている。
「見た事も聞いた事もないに、これだなと認識するのが不思議だ」と仔細しさいらしく髯を撚ひねる。「わしは歌麻呂うたまろのかいた美人を認識したが、なんと画えを活いかす工夫はなかろか」とまた女の方を向く。「私わたしには――認識した御本人でなくては」と団扇のふさを繊ほそい指に巻きつける。「夢にすれば、すぐに活いきる」と例の髯が無造作むぞうさに答える。「どうして?」「わしのはこうじゃ」と語り出そうとする時、蚊遣火かやりびが消えて、暗きに潜ひそめるがつと出でて頸筋くびすじにあたりをちくと刺す。
「灰が湿しめっているのか知らん」と女が蚊遣筒を引き寄せて蓋ふたをとると、赤い絹糸で括くくりつけた蚊遣灰が燻いぶりながらふらふらと揺れる。東隣で琴ことと尺八を合せる音が紫陽花あじさいの茂みを洩もれて手にとるように聞え出す。すかして見ると明け放ちたる座敷の灯ひさえちらちら見える。「どうかな」と一人が云うと「人並じゃ」と一人が答える。女ばかりは黙っている。
「わしのはこうじゃ」と話しがまた元へ返る。火をつけ直した蚊遣の煙が、筒に穿うがてる三つの穴を洩れて三つの煙となる。「今度はつきました」と女が云う。三つの煙りが蓋ふたの上に塊かたまって茶色の球たまが出来ると思うと、雨を帯びた風が颯さっと来て吹き散らす。塊まらぬ間うちに吹かるるときには三つの煙りが三つの輪を描えがいて、黒塗に蒔絵まきえを散らした筒の周囲まわりを遶めぐる。あるものは緩ゆるく、あるものは疾とく遶る。またある時は輪さえ描く隙ひまなきに乱れてしまう。「荼毘だびだ、荼毘だ」と丸顔の男は急に焼場の光景を思い出す。「蚊かの世界も楽じゃなかろ」と女は人間を蚊に比較する。元へ戻りかけた話しも蚊遣火と共に吹き散らされてしもうた。話しかけた男は別に語りつづけようともせぬ。世の中はすべてこれだと疾とうから知っている。
「御夢の物語りは」とややありて女が聞く。男は傍かたわらにある羊皮ようひの表紙に朱で書名を入れた詩集をとりあげて膝の上に置く。読みさした所に象牙ぞうげを薄く削けずった紙かみ小刀ナイフが挟はさんである。巻かんに余って長く外へ食はみ出した所だけは細かい汗をかいている。指の尖さきで触さわると、ぬらりとあやしい字が出来る。「こう湿気しけてはたまらん」と眉まゆをひそめる。女も「じめじめする事」と片手に袂たもとの先を握って見て、「香こうでも焚たきましょか」と立つ。夢の話しはまた延びる。
 宣徳せんとくの香炉こうろに紫檀したんの蓋があって、紫檀の蓋の真中には猿を彫きざんだ青玉せいぎょくのつまみ手がついている。女の手がこの蓋にかかったとき「あら蜘蛛くもが」と云うて長い袖そでが横に靡なびく、二人の男は共に床とこの方を見る。香炉に隣る白磁はくじの瓶へいには蓮はすの花がさしてある。昨日きのうの雨を蓑みの着て剪きりし人の情なさけを床とこに眺ながむる莟つぼみは一輪、巻葉は二つ。その葉を去る三寸ばかりの上に、天井から白金しろがねの糸を長く引いて一匹の蜘蛛くもが――すこぶる雅がだ。
「蓮の葉に蜘蛛下くだりけり香を焚たく」と吟じながら女一度に数弁すうべんを攫つかんで香炉の裏うちになげ込む。「※(「虫+蕭」、第4水準2-87-94)蛸しょうしょう懸かかって不揺うごかず、篆煙てんえん遶竹梁ちくりょうをめぐる」と誦じゅして髯ひげある男も、見ているままで払わんともせぬ。蜘蛛も動かぬ。ただ風吹く毎に少しくゆれるのみである。
「夢の話しを蜘蛛もききに来たのだろ」と丸い男が笑うと、「そうじゃ夢に画えを活いかす話しじゃ。ききたくば蜘蛛も聞け」と膝の上なる詩集を読む気もなしに開く。眼は文字もじの上に落つれども瞳裏とうりに映ずるは詩の国の事か。夢の国の事か。
「百二十間の廻廊があって、百二十個の灯籠とうろうをつける。百二十間の廻廊に春の潮うしおが寄せて、百二十個の灯籠が春風しゅんぷうにまたたく、朧おぼろの中、海の中には大きな華表とりいが浮かばれぬ巨人の化物ばけもののごとくに立つ。……」
 折から烈はげしき戸鈴ベルの響がして何者か門口かどぐちをあける。話し手ははたと話をやめる。残るはちょと居ずまいを直す。誰も這入はいって来た気色けしきはない。「隣だ」と髯ひげなしが云う。やがて渋蛇しぶじゃの目を開く音がして「また明晩」と若い女の声がする。「必ず」と答えたのは男らしい。三人は無言のまま顔を見合せて微かすかに笑う。「あれは画じゃない、活きている」「あれを平面につづめればやはり画だ」「しかしあの声は?」「女は藤紫」「男は?」「そうさ」と判じかねて髯が女の方を向く。女は「緋ひ」と賤いやしむごとく答える。
「百二十間の廻廊に二百三十五枚の額が懸かかって、その二百三十二枚目の額に画かいてある美人の……」
「声は黄色ですか茶色ですか」と女がきく。
「そんな単調な声じゃない。色には直なおせぬ声じゃ。強しいて云えば、ま、あなたのような声かな」
「ありがとう」と云う女の眼の中うちには憂をこめて笑の光が漲みなぎる。
 この時いずくよりか二疋ひきの蟻ありが這はい出して一疋は女の膝ひざの上に攀よじ上のぼる。おそらくは戸迷とまどいをしたものであろう。上がり詰めた上には獲物えものもなくて下くだり路みちをすら失うた。女は驚ろいた様さまもなく、うろうろする黒きものを、そと白き指で軽く払い落す。落されたる拍子ひょうしに、はたと他の一疋と高麗縁こうらいべりの上で出逢であう。しばらくは首と首を合せて何かささやき合えるようであったが、このたびは女の方へは向わず、古伊万里こいまりの菓子皿を端はじまで同行して、ここで右と左へ分れる。三人の眼は期せずして二疋の蟻の上に落つる。髯なき男がやがて云う。
「八畳の座敷があって、三人の客が坐わる。一人の女の膝へ一疋の蟻が上る。一疋の蟻が上った美人の手は……」
「白い、蟻は黒い」と髯がつける。三人が斉ひとしく笑う。一疋の蟻は灰吹はいふきを上りつめて絶頂で何か思案している。残るは運よく菓子器の中で葛餅くずもちに邂逅かいこうして嬉しさの余りか、まごまごしている気合けわいだ。
「その画えにかいた美人が?」と女がまた話を戻す。
「波さえ音もなき朧月夜おぼろづきよに、ふと影がさしたと思えばいつの間まにか動き出す。長く連つらなる廻廊を飛ぶにもあらず、踏むにもあらず、ただ影のままにて動く」
「顔は」と髯なしが尋ねる時、再び東隣りの合奏が聞え出す。一曲は疾とくにやんで新たなる一曲を始めたと見える。あまり旨うまくはない。

マリーン将軍諸君が幸せになる世界、作ってあげたいなぁ
彼らはこの海に一番不自由な人だから
自由を手に入れたい海賊のほうが、動揺しないし、心が楽だし、幸せになるわけだ
本物の正義が塗り替えられた世界で正義を求め正義を守るなんて、バカなもんだ
だから彼が背負うこと、あんまりにも重たい。あんまりにも愚かで不憫すぎる。
不落の正義、あれはただのカッコつけじゃないんだ、呪いだ
いくら頑張っても報われない、救われないんだ
だからもうこの作者信じてはいけないんだ


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