#河野纯喜[超话]# #JO1的太阳河野纯喜#
221026 in【modelpress】
「JO1×サンリオ新キャラ開発プロジェクト」ep.6 収録現場潜⼊レポート
― サンリオさんはクリエイティブ社の皆さんが描いた絵を見られた第一印象はいかがでしたか?
サンリオ:皆さん絵が本当に上手でびっくりしました。デザインだけじゃなく文字情報も沢山入れていただいたのですごく思いが詰まったスケッチだったなという印象です。
河野:ありがとうございます!
― サンリオに誰かヘッドハンティングするなら?
河野:(食い気味に)ありがとうございます!
一同:(笑)
サンリオ:見ていただいた通り、モチーフがバラバラなのが11人揃ったときのバランスが大変だったなとデザイナーから聞いております。特にマイクンのキャラクターはサンリオでも珍しいので馴染んでくれるか心配でした。
一同:(笑)
與那城:なるほど!そういうのがあるんですね。すみません、本当に。
河野:すごく可愛いじゃないですか(悲しげに)。
川西:(集合ビジュアルを見て)凹んでいるから、シンクロ率が…
河野:本当に言われてたんですか?マイクが「ダメだ」って。
一同:(悲しげな河野をフォロー)
與那城:「ダメ」とは言われてない(笑)。「難しいかな」って。
木全:可愛いね。
― 自分たちが作ったキャラクターが完成してみていかがですか、河野さん?
與那城:その後にその質問(笑)。
河野:そうですね~、僕が作ったキャラクターが一番可愛いなって思いました。
木全:かっこいい。
金城:もうちょっとちゃんと…(コメントを)
川西:あるやろ(笑)。
― 自分が描いたものがキャラクターになってどうですか?
河野:正直僕はあんまり絵が得意じゃなくて、描いた素案からこのマイクを見たときに本当に見違えるように成長していまして本当にサンリオさんには感謝しきれないとまず思います。本当に一番可愛くなって帰ってきたので大好きですね。
與那城:全員でしょ、なんで「だけ」言ってるの。びっくりした。
川西:ぽぽだけでも世界に近づけたらなと。“Go to the top”してくれたら。
河野:全員連れて行って。
221026 in【modelpress】
「JO1×サンリオ新キャラ開発プロジェクト」ep.6 収録現場潜⼊レポート
― サンリオさんはクリエイティブ社の皆さんが描いた絵を見られた第一印象はいかがでしたか?
サンリオ:皆さん絵が本当に上手でびっくりしました。デザインだけじゃなく文字情報も沢山入れていただいたのですごく思いが詰まったスケッチだったなという印象です。
河野:ありがとうございます!
― サンリオに誰かヘッドハンティングするなら?
河野:(食い気味に)ありがとうございます!
一同:(笑)
サンリオ:見ていただいた通り、モチーフがバラバラなのが11人揃ったときのバランスが大変だったなとデザイナーから聞いております。特にマイクンのキャラクターはサンリオでも珍しいので馴染んでくれるか心配でした。
一同:(笑)
與那城:なるほど!そういうのがあるんですね。すみません、本当に。
河野:すごく可愛いじゃないですか(悲しげに)。
川西:(集合ビジュアルを見て)凹んでいるから、シンクロ率が…
河野:本当に言われてたんですか?マイクが「ダメだ」って。
一同:(悲しげな河野をフォロー)
與那城:「ダメ」とは言われてない(笑)。「難しいかな」って。
木全:可愛いね。
― 自分たちが作ったキャラクターが完成してみていかがですか、河野さん?
與那城:その後にその質問(笑)。
河野:そうですね~、僕が作ったキャラクターが一番可愛いなって思いました。
木全:かっこいい。
金城:もうちょっとちゃんと…(コメントを)
川西:あるやろ(笑)。
― 自分が描いたものがキャラクターになってどうですか?
河野:正直僕はあんまり絵が得意じゃなくて、描いた素案からこのマイクを見たときに本当に見違えるように成長していまして本当にサンリオさんには感謝しきれないとまず思います。本当に一番可愛くなって帰ってきたので大好きですね。
與那城:全員でしょ、なんで「だけ」言ってるの。びっくりした。
川西:ぽぽだけでも世界に近づけたらなと。“Go to the top”してくれたら。
河野:全員連れて行って。
2022.10.21
狗飼恭子-#少年のアビス#劇本老師
關於這部戲的推文
2022.09.01
ドラマ特区『少年のアビス』、いよいよ本日より放送です。皆様,どうぞよろしくお願いいたします。以下、この物語についてわたしの想いを。物語に触れますので、お嫌な方はツリーをご覧にならないようご注意くださいませ。
『少年のアビス』、主人公の令児(荒木飛羽)はヤングケアラーです。彼は狭い世界の中で、自分さえ我慢すればいいのだと考えている。いや、それを我慢だとすら思えていない少年です。彼はその町のさまざまな人から、ありとあらゆる搾取をされています。令児の幼なじみのチャコ→
(本田望結)は一見幸福そうすが、女であるという呪縛の中に閉じ込められています。玄(堀夏喜)も強者に見えますが、彼もまた勝手な大人たちに振り回され、暴力しか対話言語を持てなかった少年です。
三人の子供たちが小さすぎる町で、苦しみの声を上げられずにいるーそこにふいに現れたのが、→
大人でも子供でもない存在、青江ナギ(北野日奈子)です。彼女の来町を引き金に、小さな町の搾取される子供たちと、搾取する側である大人たちにどんな変化が起こるのか。原作をはじめて読んだとき、子供たちでなく大人たちの気持ちを理解してしまった自分が、悲しかった。わたしがあの町に住む大人→
だったとしたらやはり、少年たちの苦しみに目を瞑り日常を継続することを選んでしまうだろうと思います。柴ちゃん(松井玲奈)のように正義の入り口に立つことすらできないでしょう(結果的に歪んでしまいますが、彼女は「大人であろうとする、今も少女を捨てきれない人」です)。→
悪者に見えてしまうだろう大人たちー令児の母、夕子(片岡礼子)、町を捨てた男、似非森(和田聰宏)も、町の呪いの中で子供たちにすがることしかできないのかもしれません。
わたしは、この物語を俯瞰でみつめることができる町外の大人として、どうにか三人の子供たちを助けたいと思いました。→
それだけを願いながら脚本を書きました。
彼らが最後にどんな救いを手に入れるのか、あるいは手に入れられないのか、最終話まで見守って頂ければ幸いです。そしてこのドラマが、今現実で苦しんでいる誰かの、なによりあなたの孤独によりそうことができれば、それ以上の喜びはありません。→
どうぞよろしくお願いします。
脚本 狗飼恭子
2022.10.20 11:31
『少年のアビス』、本日ついに最終回です。脚本を書きながら考えたわたしの想いを、もう一度リツイートさせてください。あの子たちが幸せになれますように。心から。
2022.10.20 18:45
ドラマ #少年のアビス
それぞれの結末を作ったあとも、登場人物のこれからの人生は続いていくような不思議な感覚でいます。
自分が「少年のアビス」に出会うことで救われたように、観た人の寂しさや誰にも見せたことのない心の闇に寄り添えたらと願っています!
本日最終回です
23:00-TVK 24:59-MBS
狗飼恭子-#少年のアビス#劇本老師
關於這部戲的推文
2022.09.01
ドラマ特区『少年のアビス』、いよいよ本日より放送です。皆様,どうぞよろしくお願いいたします。以下、この物語についてわたしの想いを。物語に触れますので、お嫌な方はツリーをご覧にならないようご注意くださいませ。
『少年のアビス』、主人公の令児(荒木飛羽)はヤングケアラーです。彼は狭い世界の中で、自分さえ我慢すればいいのだと考えている。いや、それを我慢だとすら思えていない少年です。彼はその町のさまざまな人から、ありとあらゆる搾取をされています。令児の幼なじみのチャコ→
(本田望結)は一見幸福そうすが、女であるという呪縛の中に閉じ込められています。玄(堀夏喜)も強者に見えますが、彼もまた勝手な大人たちに振り回され、暴力しか対話言語を持てなかった少年です。
三人の子供たちが小さすぎる町で、苦しみの声を上げられずにいるーそこにふいに現れたのが、→
大人でも子供でもない存在、青江ナギ(北野日奈子)です。彼女の来町を引き金に、小さな町の搾取される子供たちと、搾取する側である大人たちにどんな変化が起こるのか。原作をはじめて読んだとき、子供たちでなく大人たちの気持ちを理解してしまった自分が、悲しかった。わたしがあの町に住む大人→
だったとしたらやはり、少年たちの苦しみに目を瞑り日常を継続することを選んでしまうだろうと思います。柴ちゃん(松井玲奈)のように正義の入り口に立つことすらできないでしょう(結果的に歪んでしまいますが、彼女は「大人であろうとする、今も少女を捨てきれない人」です)。→
悪者に見えてしまうだろう大人たちー令児の母、夕子(片岡礼子)、町を捨てた男、似非森(和田聰宏)も、町の呪いの中で子供たちにすがることしかできないのかもしれません。
わたしは、この物語を俯瞰でみつめることができる町外の大人として、どうにか三人の子供たちを助けたいと思いました。→
それだけを願いながら脚本を書きました。
彼らが最後にどんな救いを手に入れるのか、あるいは手に入れられないのか、最終話まで見守って頂ければ幸いです。そしてこのドラマが、今現実で苦しんでいる誰かの、なによりあなたの孤独によりそうことができれば、それ以上の喜びはありません。→
どうぞよろしくお願いします。
脚本 狗飼恭子
2022.10.20 11:31
『少年のアビス』、本日ついに最終回です。脚本を書きながら考えたわたしの想いを、もう一度リツイートさせてください。あの子たちが幸せになれますように。心から。
2022.10.20 18:45
ドラマ #少年のアビス
それぞれの結末を作ったあとも、登場人物のこれからの人生は続いていくような不思議な感覚でいます。
自分が「少年のアビス」に出会うことで救われたように、観た人の寂しさや誰にも見せたことのない心の闇に寄り添えたらと願っています!
本日最終回です
23:00-TVK 24:59-MBS
#昆仑神宫做对了哪些地方##时间旅行##天文#
蜜柑
芥川龍之介
或曇つた冬の日暮である。私は横須賀発上り二等客車の隅に腰を下して、ぼんやり発車の笛を待つてゐた。とうに電燈のついた客車の中には、珍らしく私の外に一人も乗客はゐなかつた。外を覗のぞくと、うす暗いプラツトフオオムにも、今日は珍しく見送りの人影さへ跡を絶つて、唯、檻をりに入れられた小犬が一匹、時々悲しさうに、吠え立ててゐた。これらはその時の私の心もちと、不思議な位似つかはしい景色だつた。私の頭の中には云ひやうのない疲労と倦怠とが、まるで雪曇りの空のやうなどんよりした影を落してゐた。私は外套のポツケツトへぢつと両手をつつこんだ儘まま、そこにはいつてゐる夕刊を出して見ようと云ふ元気さへ起らなかつた。
が、やがて発車の笛が鳴つた。私はかすかな心の寛くつろぎを感じながら、後の窓枠へ頭をもたせて、眼の前の停車場がずるずると後ずさりを始めるのを待つともなく待ちかまへてゐた。所がそれよりも先にけたたましい日和ひより下駄の音が、改札口の方から聞え出したと思ふと、間もなく車掌の何か云ひ罵ののしる声と共に、私の乗つてゐる二等室の戸ががらりと開いて、十三四の小娘が一人、慌あわただしく中へはいつて来た、と同時に一つづしりと揺れて、徐おもむろに汽車は動き出した。一本づつ眼をくぎつて行くプラツトフオオムの柱、置き忘れたやうな運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を云つてゐる赤帽――さう云ふすべては、窓へ吹きつける煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行つた。私は漸やうやくほつとした心もちになつて、巻煙草に火をつけながら、始めて懶ものうい睚まぶたをあげて、前の席に腰を下してゐた小娘の顔を一瞥いちべつした。
それは油気のない髪をひつつめの銀杏返いてふがへしに結つて、横なでの痕のある皸ひびだらけの両頬を気持の悪い程赤く火照ほてらせた、如何にも田舎者ゐなかものらしい娘だつた。しかも垢じみた萌黄色もえぎいろの毛糸の襟巻がだらりと垂れ下つた膝の上には、大きな風呂敷包みがあつた。その又包みを抱いた霜焼けの手の中には、三等の赤切符が大事さうにしつかり握られてゐた。私はこの小娘の下品な顔だちを好まなかつた。それから彼女の服装が不潔なのもやはり不快だつた。最後にその二等と三等との区別さへも弁わきまへない愚鈍な心が腹立たしかつた。だから巻煙草に火をつけた私は、一つにはこの小娘の存在を忘れたいと云ふ心もちもあつて、今度はポツケツトの夕刊を漫然と膝の上へひろげて見た。すると其時夕刊の紙面に落ちてゐた外光が、突然電燈の光に変つて、刷すりの悪い何欄かの活字が意外な位鮮あざやかに私の眼の前へ浮んで来た。云ふまでもなく汽車は今、横須賀線に多い隧道トンネルの最初のそれへはいつたのである。
しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても、やはり私の憂欝を慰むべく、世間は余りに平凡な出来事ばかりで持ち切つてゐた。講和問題、新婦新郎、涜職とくしよく事件、死亡広告――私は隧道へはいつた一瞬間、汽車の走つてゐる方向が逆になつたやうな錯覚を感じながら、それらの索漠とした記事から記事へ殆ほとんど機械的に眼を通した。が、その間も勿論あの小娘が、恰あたかも卑俗な現実を人間にしたやうな面持ちで、私の前に坐つてゐる事を絶えず意識せずにはゐられなかつた。この隧道の中の汽車と、この田舎者の小娘と、さうして又この平凡な記事に埋つてゐる夕刊と、――これが象徴でなくて何であらう。不可解な、下等な、退屈な人生の象徴でなくて何であらう。私は一切がくだらなくなつて、読みかけた夕刊を抛はふり出すと、又窓枠に頭を靠もたせながら、死んだやうに眼をつぶつて、うつらうつらし始めた。
それから幾分か過ぎた後であつた。ふと何かに脅おびやかされたやうな心もちがして、思はずあたりを見まはすと、何時いつの間にか例の小娘が、向う側から席を私の隣へ移して、頻しきりに窓を開けようとしてゐる。が、重い硝子戸ガラスどは中々思ふやうにあがらないらしい。あの皸ひびだらけの頬は愈いよいよ赤くなつて、時々鼻洟はなをすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しよに、せはしなく耳へはいつて来る。これは勿論私にも、幾分ながら同情を惹ひくに足るものには相違なかつた。しかし汽車が今将まさに隧道トンネルの口へさしかからうとしてゐる事は、暮色の中に枯草ばかり明い両側の山腹が、間近く窓側に迫つて来たのでも、すぐに合点がてんの行く事であつた。にも関らずこの小娘は、わざわざしめてある窓の戸を下さうとする、――その理由が私には呑みこめなかつた。いや、それが私には、単にこの小娘の気まぐれだとしか考へられなかつた。だから私は腹の底に依然として険しい感情を蓄へながら、あの霜焼けの手が硝子戸を擡もたげようとして悪戦苦闘する容子ようすを、まるでそれが永久に成功しない事でも祈るやうな冷酷な眼で眺めてゐた。すると間もなく凄じい音をはためかせて、汽車が隧道へなだれこむと同時に、小娘の開けようとした硝子戸は、とうとうばたりと下へ落ちた。さうしてその四角な穴の中から、煤すすを溶したやうなどす黒い空気が、俄にはかに息苦しい煙になつて、濛々もうもうと車内へ漲みなぎり出した。元来咽喉のどを害してゐた私は、手巾ハンケチを顔に当てる暇さへなく、この煙を満面に浴びせられたおかげで、殆ほとんど息もつけない程咳せきこまなければならなかつた。が、小娘は私に頓着する気色けしきも見えず、窓から外へ首をのばして、闇を吹く風に銀杏返いてふがへしの鬢びんの毛を戦そよがせながら、ぢつと汽車の進む方向を見やつてゐる。その姿を煤煙ばいえんと電燈の光との中に眺めた時、もう窓の外が見る見る明くなつて、そこから土の匂や枯草の匂や水の匂が冷ひややかに流れこんで来なかつたなら、漸やうやく咳きやんだ私は、この見知らない小娘を頭ごなしに叱りつけてでも、又元の通り窓の戸をしめさせたのに相違なかつたのである。
しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道トンネルを辷すべりぬけて、枯草の山と山との間に挾まれた、或貧しい町はづれの踏切りに通りかかつてゐた。踏切りの近くには、いづれも見すぼらしい藁屋根や瓦屋根がごみごみと狭苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであらう、唯一旒いちりうのうす白い旗が懶ものうげに暮色を揺ゆすつてゐた。やつと隧道を出たと思ふ――その時その蕭索せうさくとした踏切りの柵の向うに、私は頬の赤い三人の男の子が、目白押しに並んで立つてゐるのを見た。彼等は皆、この曇天に押しすくめられたかと思ふ程、揃そろつて背が低かつた。さうして又この町はづれの陰惨たる風物と同じやうな色の着物を着てゐた。それが汽車の通るのを仰ぎ見ながら、一斉に手を挙げるが早いか、いたいけな喉を高く反そらせて、何とも意味の分らない喊声かんせいを一生懸命に迸ほとばしらせた。するとその瞬間である。窓から半身を乗り出してゐた例の娘が、あの霜焼けの手をつとのばして、勢よく左右に振つたと思ふと、忽ち心を躍らすばかり暖な日の色に染まつてゐる蜜柑みかんが凡そ五つ六つ、汽車を見送つた子供たちの上へばらばらと空から降つて来た。私は思はず息を呑んだ。さうして刹那に一切を了解した。小娘は、恐らくはこれから奉公先へ赴おもむかうとしてゐる小娘は、その懐に蔵してゐた幾顆いくくわの蜜柑を窓から投げて、わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いたのである。
暮色を帯びた町はづれの踏切りと、小鳥のやうに声を挙げた三人の子供たちと、さうしてその上に乱落する鮮あざやかな蜜柑の色と――すべては汽車の窓の外に、瞬またたく暇もなく通り過ぎた。が、私の心の上には、切ない程はつきりと、この光景が焼きつけられた。さうしてそこから、或得体えたいの知れない朗ほがらかな心もちが湧き上つて来るのを意識した。私は昂然と頭を挙げて、まるで別人を見るやうにあの小娘を注視した。小娘は何時かもう私の前の席に返つて、不相変あひかはらず皸ひびだらけの頬を萌黄色の毛糸の襟巻に埋めながら、大きな風呂敷包みを抱へた手に、しつかりと三等切符を握つてゐる。…………
私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである。
(大正八年四月)
蜜柑
芥川龍之介
或曇つた冬の日暮である。私は横須賀発上り二等客車の隅に腰を下して、ぼんやり発車の笛を待つてゐた。とうに電燈のついた客車の中には、珍らしく私の外に一人も乗客はゐなかつた。外を覗のぞくと、うす暗いプラツトフオオムにも、今日は珍しく見送りの人影さへ跡を絶つて、唯、檻をりに入れられた小犬が一匹、時々悲しさうに、吠え立ててゐた。これらはその時の私の心もちと、不思議な位似つかはしい景色だつた。私の頭の中には云ひやうのない疲労と倦怠とが、まるで雪曇りの空のやうなどんよりした影を落してゐた。私は外套のポツケツトへぢつと両手をつつこんだ儘まま、そこにはいつてゐる夕刊を出して見ようと云ふ元気さへ起らなかつた。
が、やがて発車の笛が鳴つた。私はかすかな心の寛くつろぎを感じながら、後の窓枠へ頭をもたせて、眼の前の停車場がずるずると後ずさりを始めるのを待つともなく待ちかまへてゐた。所がそれよりも先にけたたましい日和ひより下駄の音が、改札口の方から聞え出したと思ふと、間もなく車掌の何か云ひ罵ののしる声と共に、私の乗つてゐる二等室の戸ががらりと開いて、十三四の小娘が一人、慌あわただしく中へはいつて来た、と同時に一つづしりと揺れて、徐おもむろに汽車は動き出した。一本づつ眼をくぎつて行くプラツトフオオムの柱、置き忘れたやうな運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を云つてゐる赤帽――さう云ふすべては、窓へ吹きつける煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行つた。私は漸やうやくほつとした心もちになつて、巻煙草に火をつけながら、始めて懶ものうい睚まぶたをあげて、前の席に腰を下してゐた小娘の顔を一瞥いちべつした。
それは油気のない髪をひつつめの銀杏返いてふがへしに結つて、横なでの痕のある皸ひびだらけの両頬を気持の悪い程赤く火照ほてらせた、如何にも田舎者ゐなかものらしい娘だつた。しかも垢じみた萌黄色もえぎいろの毛糸の襟巻がだらりと垂れ下つた膝の上には、大きな風呂敷包みがあつた。その又包みを抱いた霜焼けの手の中には、三等の赤切符が大事さうにしつかり握られてゐた。私はこの小娘の下品な顔だちを好まなかつた。それから彼女の服装が不潔なのもやはり不快だつた。最後にその二等と三等との区別さへも弁わきまへない愚鈍な心が腹立たしかつた。だから巻煙草に火をつけた私は、一つにはこの小娘の存在を忘れたいと云ふ心もちもあつて、今度はポツケツトの夕刊を漫然と膝の上へひろげて見た。すると其時夕刊の紙面に落ちてゐた外光が、突然電燈の光に変つて、刷すりの悪い何欄かの活字が意外な位鮮あざやかに私の眼の前へ浮んで来た。云ふまでもなく汽車は今、横須賀線に多い隧道トンネルの最初のそれへはいつたのである。
しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても、やはり私の憂欝を慰むべく、世間は余りに平凡な出来事ばかりで持ち切つてゐた。講和問題、新婦新郎、涜職とくしよく事件、死亡広告――私は隧道へはいつた一瞬間、汽車の走つてゐる方向が逆になつたやうな錯覚を感じながら、それらの索漠とした記事から記事へ殆ほとんど機械的に眼を通した。が、その間も勿論あの小娘が、恰あたかも卑俗な現実を人間にしたやうな面持ちで、私の前に坐つてゐる事を絶えず意識せずにはゐられなかつた。この隧道の中の汽車と、この田舎者の小娘と、さうして又この平凡な記事に埋つてゐる夕刊と、――これが象徴でなくて何であらう。不可解な、下等な、退屈な人生の象徴でなくて何であらう。私は一切がくだらなくなつて、読みかけた夕刊を抛はふり出すと、又窓枠に頭を靠もたせながら、死んだやうに眼をつぶつて、うつらうつらし始めた。
それから幾分か過ぎた後であつた。ふと何かに脅おびやかされたやうな心もちがして、思はずあたりを見まはすと、何時いつの間にか例の小娘が、向う側から席を私の隣へ移して、頻しきりに窓を開けようとしてゐる。が、重い硝子戸ガラスどは中々思ふやうにあがらないらしい。あの皸ひびだらけの頬は愈いよいよ赤くなつて、時々鼻洟はなをすすりこむ音が、小さな息の切れる声と一しよに、せはしなく耳へはいつて来る。これは勿論私にも、幾分ながら同情を惹ひくに足るものには相違なかつた。しかし汽車が今将まさに隧道トンネルの口へさしかからうとしてゐる事は、暮色の中に枯草ばかり明い両側の山腹が、間近く窓側に迫つて来たのでも、すぐに合点がてんの行く事であつた。にも関らずこの小娘は、わざわざしめてある窓の戸を下さうとする、――その理由が私には呑みこめなかつた。いや、それが私には、単にこの小娘の気まぐれだとしか考へられなかつた。だから私は腹の底に依然として険しい感情を蓄へながら、あの霜焼けの手が硝子戸を擡もたげようとして悪戦苦闘する容子ようすを、まるでそれが永久に成功しない事でも祈るやうな冷酷な眼で眺めてゐた。すると間もなく凄じい音をはためかせて、汽車が隧道へなだれこむと同時に、小娘の開けようとした硝子戸は、とうとうばたりと下へ落ちた。さうしてその四角な穴の中から、煤すすを溶したやうなどす黒い空気が、俄にはかに息苦しい煙になつて、濛々もうもうと車内へ漲みなぎり出した。元来咽喉のどを害してゐた私は、手巾ハンケチを顔に当てる暇さへなく、この煙を満面に浴びせられたおかげで、殆ほとんど息もつけない程咳せきこまなければならなかつた。が、小娘は私に頓着する気色けしきも見えず、窓から外へ首をのばして、闇を吹く風に銀杏返いてふがへしの鬢びんの毛を戦そよがせながら、ぢつと汽車の進む方向を見やつてゐる。その姿を煤煙ばいえんと電燈の光との中に眺めた時、もう窓の外が見る見る明くなつて、そこから土の匂や枯草の匂や水の匂が冷ひややかに流れこんで来なかつたなら、漸やうやく咳きやんだ私は、この見知らない小娘を頭ごなしに叱りつけてでも、又元の通り窓の戸をしめさせたのに相違なかつたのである。
しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道トンネルを辷すべりぬけて、枯草の山と山との間に挾まれた、或貧しい町はづれの踏切りに通りかかつてゐた。踏切りの近くには、いづれも見すぼらしい藁屋根や瓦屋根がごみごみと狭苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであらう、唯一旒いちりうのうす白い旗が懶ものうげに暮色を揺ゆすつてゐた。やつと隧道を出たと思ふ――その時その蕭索せうさくとした踏切りの柵の向うに、私は頬の赤い三人の男の子が、目白押しに並んで立つてゐるのを見た。彼等は皆、この曇天に押しすくめられたかと思ふ程、揃そろつて背が低かつた。さうして又この町はづれの陰惨たる風物と同じやうな色の着物を着てゐた。それが汽車の通るのを仰ぎ見ながら、一斉に手を挙げるが早いか、いたいけな喉を高く反そらせて、何とも意味の分らない喊声かんせいを一生懸命に迸ほとばしらせた。するとその瞬間である。窓から半身を乗り出してゐた例の娘が、あの霜焼けの手をつとのばして、勢よく左右に振つたと思ふと、忽ち心を躍らすばかり暖な日の色に染まつてゐる蜜柑みかんが凡そ五つ六つ、汽車を見送つた子供たちの上へばらばらと空から降つて来た。私は思はず息を呑んだ。さうして刹那に一切を了解した。小娘は、恐らくはこれから奉公先へ赴おもむかうとしてゐる小娘は、その懐に蔵してゐた幾顆いくくわの蜜柑を窓から投げて、わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いたのである。
暮色を帯びた町はづれの踏切りと、小鳥のやうに声を挙げた三人の子供たちと、さうしてその上に乱落する鮮あざやかな蜜柑の色と――すべては汽車の窓の外に、瞬またたく暇もなく通り過ぎた。が、私の心の上には、切ない程はつきりと、この光景が焼きつけられた。さうしてそこから、或得体えたいの知れない朗ほがらかな心もちが湧き上つて来るのを意識した。私は昂然と頭を挙げて、まるで別人を見るやうにあの小娘を注視した。小娘は何時かもう私の前の席に返つて、不相変あひかはらず皸ひびだらけの頬を萌黄色の毛糸の襟巻に埋めながら、大きな風呂敷包みを抱へた手に、しつかりと三等切符を握つてゐる。…………
私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである。
(大正八年四月)
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