東洋大学・宮下朝陽 同じ相手に2度敗れても、高校野球は「やり切った」と胸を張れる
阪神甲子園球場では、第104回全国高校野球選手権大会の熱戦が続いています。4years.では昨年2年ぶりに開催された舞台に立ち、大学野球の道に進んだ1年生の選手たちに、高校時代のことや、特別な経験を今の野球生活にどうつなげているかについて聞きました。「あの夏があったから2022~甲子園の記憶」と題して、大会の期間中にお届けします。第4回は春夏連続で出場し、特に春は開幕試合に登場した東洋大学の宮下朝陽(あさひ、北海)です。
監督から「開幕戦と神戸国際大付だけは……」
北海(南北海道)は創部120周年を迎えた昨年、春夏連続で甲子園に出場した。いずれも初戦で神戸国際大付(兵庫)と対戦し、ともに1点差の接戦で敗れた。主将として、4番としてチームを引っ張った宮下は「勝てた試合だった」と悔やむが、「甲子園で終われてよかった。高校野球をやり切った」と胸を張る。
8月3日に行われた昨夏の組み合わせ抽選会。初戦は3日目の第3試合。相手は春と同じ神戸国際大付に決まった。宮下は、苦笑いしながらこう振り返る。
「持ってるのか、持ってないのか……。なんとなく、北海のところに神戸国際大付が来そうだなぁっていう雰囲気は感じていたんです。そうしたら、やっぱりきました(笑)。平川(敦)監督には『開幕戦と神戸国際大付だけは引かないでくれ』と言われてたんですけど。でも、春のリベンジができるチャンスと、みんな気合が入りました」
3月の選抜高校野球大会、北海は開幕戦で神戸国際大付と対戦した。開会式直後の一戦で、試合前は慌ただしかった。1点リードで九回を迎え、相手は1死一、三塁のチャンスからスクイズを仕掛けてきた。投手の木村大成(現・福岡ソフトバンクホークス)は変化球でバットに当てさせなかったが、捕手の大津綾也(現・読売ジャイアンツ)がこれをはじいてしまった。三塁走者が生還(記録は本盗)、同点に追いつかれた。
なおも2死二塁から、次打者の放った打球はレフト前へ。サヨナラ負けかと思われた場面で、北海のレフト・林大海(現・桜美林大)が好返球を見せ、本塁を狙った二塁走者はタッチアウト。ピンチを切り抜けた。
「ダメかなと思ったら、林が刺してくれました。歓声が下の方からうわぁーって湧き上がってきたのがすごかったです。春はお客さんも入っていたので、甲子園の雰囲気って、いいなぁと思いました」
夏は入場者を代表校の関係者に限定して開催されたが、春は上限1万人まで許されていた。北海は十回1死満塁からセンター前を打たれ、サヨナラで敗れた。それでも宮下にとっては直前の九回、林の好返球でピンチを切り抜けた場面で、甲子園に湧き上がった歓声が強く印象に残っているという。
春に続いて、遠かったあと1点
宮下は余市シニア時代、3年連続で全国大会に出場し、中学3年の夏にはジャイアンツカップも経験した。北海に進学後は、1年の夏から4番を任された。のちにプロ入りする木村―大津のバッテリーも、下級生のころから公式戦を経験している。期待が高かった3年夏は、全国最多となる39回目の甲子園出場。大正時代から大会に出続け、昭和、平成と三つの元号で勝利を挙げている北海には「4元号勝利」への期待もあった(初の4元号勝利は大会2日目に長野・松商学園が勝利し、先に達成した)。
昨夏の甲子園は台風接近で開幕が1日遅れ、さらに悪天候の影響で順延が3日間続き、予定より4日遅れでようやく「大会3日目」がやってきた。
夏もロースコアの展開で進んだ。二回に神戸国際大付が2点を先制。北海も五回、1点差に詰め寄った。しかしその後は得点を奪うことができず、春に続いて1点差で敗れた。宮下自身は二、八回に安打を放ったが、後続に1本が出ず、得点には結びつかなかった。「1点差でしたから、勝てる試合でもあったと思います。それでも勝てなかったのは、自分たちに力がなかったから」と宮下は悔しそうな表情を見せた。
ただ約2年半の高校野球生活には、胸を張れる。
前年はコロナ禍のため、全国高校野球選手権大会そのものが中止となり、甲子園を目指すことさえ、かなわなかった。1学年上の先輩たちが引退してからは「先輩たちの分まで」という思いを背負い、春夏連続での甲子園出場を果たした。宮下は夏の南北海道大会前の地区大会で打撃の調子を落とし、下位打線を打つこともあった。ノーステップから、すり足に変えるなどして取り戻し、南北海道大会からは4番に戻って5割を超える打率を残した。
神戸国際大付に2度敗れた悔しさ以上に、甲子園で2度も試合ができた喜びの方が大きいと宮下は言う。「リベンジはできなかったけれど、最後、甲子園で終われてよかったです。高校野球をやり切ったという思いはありました」
後輩たちは、南北海道大会の準々決勝で札幌大谷に敗れ、この夏の戦いを終えた。4番を打った左打ちの強打者、1年生の宮下温人(はると)は弟だ。兄弟ともに1年生から北海の4番を打っている。
つかみかけていた1部昇格を逃した
進学した東洋大は昨春、入れ替え戦で敗れて2部降格を喫したが、これまで数多くのプロ野球選手を輩出してきた東都大学リーグの強豪だ。その東洋大で、宮下は1年春からセカンドのレギュラーをつかみ取った。第3週の専修大学2回戦ではサイクル安打を達成。打率2割4分1厘(2部リーグ15位)、1本塁打、3打点の成績を残し、2部のベストナインと新人賞を獲得した。
チームは2部を制し、1部の最下位・中央大学との入れ替え戦に進んだ。しかし1勝1敗で迎えた3回戦、東洋大は1点リードで迎えた九回裏の守りで2点を奪われ、逆転サヨナラ負け。つかみかけていた1部昇格を目の前で逃してしまった。無死一、二塁からバントを処理した投手が、一塁へ悪送球し同点に追いつかれた。そのとき一塁のベースカバーに入っていたのが宮下だった。
「ショートバウンドになったんですけど、自分が体で止めていれば、同点に追いつかれることはなかった」と悔やむ。東都の厳しさ、野球の厳しさを思い知らされた一戦になった。「秋も優勝して、今度こそ入れ替え戦に勝って1部へ上がります」と宮下。チームに貢献すること、そして3年後のドラフト会議で上位指名を受け、プロの世界に入ることが今の目標だ。
阪神甲子園球場では、第104回全国高校野球選手権大会の熱戦が続いています。4years.では昨年2年ぶりに開催された舞台に立ち、大学野球の道に進んだ1年生の選手たちに、高校時代のことや、特別な経験を今の野球生活にどうつなげているかについて聞きました。「あの夏があったから2022~甲子園の記憶」と題して、大会の期間中にお届けします。第4回は春夏連続で出場し、特に春は開幕試合に登場した東洋大学の宮下朝陽(あさひ、北海)です。
監督から「開幕戦と神戸国際大付だけは……」
北海(南北海道)は創部120周年を迎えた昨年、春夏連続で甲子園に出場した。いずれも初戦で神戸国際大付(兵庫)と対戦し、ともに1点差の接戦で敗れた。主将として、4番としてチームを引っ張った宮下は「勝てた試合だった」と悔やむが、「甲子園で終われてよかった。高校野球をやり切った」と胸を張る。
8月3日に行われた昨夏の組み合わせ抽選会。初戦は3日目の第3試合。相手は春と同じ神戸国際大付に決まった。宮下は、苦笑いしながらこう振り返る。
「持ってるのか、持ってないのか……。なんとなく、北海のところに神戸国際大付が来そうだなぁっていう雰囲気は感じていたんです。そうしたら、やっぱりきました(笑)。平川(敦)監督には『開幕戦と神戸国際大付だけは引かないでくれ』と言われてたんですけど。でも、春のリベンジができるチャンスと、みんな気合が入りました」
3月の選抜高校野球大会、北海は開幕戦で神戸国際大付と対戦した。開会式直後の一戦で、試合前は慌ただしかった。1点リードで九回を迎え、相手は1死一、三塁のチャンスからスクイズを仕掛けてきた。投手の木村大成(現・福岡ソフトバンクホークス)は変化球でバットに当てさせなかったが、捕手の大津綾也(現・読売ジャイアンツ)がこれをはじいてしまった。三塁走者が生還(記録は本盗)、同点に追いつかれた。
なおも2死二塁から、次打者の放った打球はレフト前へ。サヨナラ負けかと思われた場面で、北海のレフト・林大海(現・桜美林大)が好返球を見せ、本塁を狙った二塁走者はタッチアウト。ピンチを切り抜けた。
「ダメかなと思ったら、林が刺してくれました。歓声が下の方からうわぁーって湧き上がってきたのがすごかったです。春はお客さんも入っていたので、甲子園の雰囲気って、いいなぁと思いました」
夏は入場者を代表校の関係者に限定して開催されたが、春は上限1万人まで許されていた。北海は十回1死満塁からセンター前を打たれ、サヨナラで敗れた。それでも宮下にとっては直前の九回、林の好返球でピンチを切り抜けた場面で、甲子園に湧き上がった歓声が強く印象に残っているという。
春に続いて、遠かったあと1点
宮下は余市シニア時代、3年連続で全国大会に出場し、中学3年の夏にはジャイアンツカップも経験した。北海に進学後は、1年の夏から4番を任された。のちにプロ入りする木村―大津のバッテリーも、下級生のころから公式戦を経験している。期待が高かった3年夏は、全国最多となる39回目の甲子園出場。大正時代から大会に出続け、昭和、平成と三つの元号で勝利を挙げている北海には「4元号勝利」への期待もあった(初の4元号勝利は大会2日目に長野・松商学園が勝利し、先に達成した)。
昨夏の甲子園は台風接近で開幕が1日遅れ、さらに悪天候の影響で順延が3日間続き、予定より4日遅れでようやく「大会3日目」がやってきた。
夏もロースコアの展開で進んだ。二回に神戸国際大付が2点を先制。北海も五回、1点差に詰め寄った。しかしその後は得点を奪うことができず、春に続いて1点差で敗れた。宮下自身は二、八回に安打を放ったが、後続に1本が出ず、得点には結びつかなかった。「1点差でしたから、勝てる試合でもあったと思います。それでも勝てなかったのは、自分たちに力がなかったから」と宮下は悔しそうな表情を見せた。
ただ約2年半の高校野球生活には、胸を張れる。
前年はコロナ禍のため、全国高校野球選手権大会そのものが中止となり、甲子園を目指すことさえ、かなわなかった。1学年上の先輩たちが引退してからは「先輩たちの分まで」という思いを背負い、春夏連続での甲子園出場を果たした。宮下は夏の南北海道大会前の地区大会で打撃の調子を落とし、下位打線を打つこともあった。ノーステップから、すり足に変えるなどして取り戻し、南北海道大会からは4番に戻って5割を超える打率を残した。
神戸国際大付に2度敗れた悔しさ以上に、甲子園で2度も試合ができた喜びの方が大きいと宮下は言う。「リベンジはできなかったけれど、最後、甲子園で終われてよかったです。高校野球をやり切ったという思いはありました」
後輩たちは、南北海道大会の準々決勝で札幌大谷に敗れ、この夏の戦いを終えた。4番を打った左打ちの強打者、1年生の宮下温人(はると)は弟だ。兄弟ともに1年生から北海の4番を打っている。
つかみかけていた1部昇格を逃した
進学した東洋大は昨春、入れ替え戦で敗れて2部降格を喫したが、これまで数多くのプロ野球選手を輩出してきた東都大学リーグの強豪だ。その東洋大で、宮下は1年春からセカンドのレギュラーをつかみ取った。第3週の専修大学2回戦ではサイクル安打を達成。打率2割4分1厘(2部リーグ15位)、1本塁打、3打点の成績を残し、2部のベストナインと新人賞を獲得した。
チームは2部を制し、1部の最下位・中央大学との入れ替え戦に進んだ。しかし1勝1敗で迎えた3回戦、東洋大は1点リードで迎えた九回裏の守りで2点を奪われ、逆転サヨナラ負け。つかみかけていた1部昇格を目の前で逃してしまった。無死一、二塁からバントを処理した投手が、一塁へ悪送球し同点に追いつかれた。そのとき一塁のベースカバーに入っていたのが宮下だった。
「ショートバウンドになったんですけど、自分が体で止めていれば、同点に追いつかれることはなかった」と悔やむ。東都の厳しさ、野球の厳しさを思い知らされた一戦になった。「秋も優勝して、今度こそ入れ替え戦に勝って1部へ上がります」と宮下。チームに貢献すること、そして3年後のドラフト会議で上位指名を受け、プロの世界に入ることが今の目標だ。
「絶対払えない」アンバー・ハードから、ジョニー・デップはどう金を取り立てるのか
猿渡由紀 | L.A.在住映画ジャーナリスト
2022年6月8日 7時45分 配信
イギリスでファンに囲まれるジョニー・デップ(写真:Splash/アフロ)
勝訴から1週間。ジョニー・デップが祝福ムードに酔っている。音楽活動で現在イギリスにいるデップは、現地時間日曜、バーミンガムのインド料理店に20人ほど親しい人を招待し、貸し切りパーティを開いた。報道によれば、デップはその一晩で5万ポンド(およそ821万円)を落としていったそうだ。
また、火曜には、インスタグラムにあらためて支持者への感謝のメッセージを投稿。ヴァージニア州フェアファックスの裁判所の前に集まってくれたファンに手を振る映像や、舞台でライブ演奏する映像を編集した動画とともに、「僕にとって最も大切な、忠実で揺るぎない支持者の人々へ。僕たちはどんなところにも一緒に行き、すべてをともにしてきました。同じ道を歩き、一緒に正しいことをしてきました。みなさんが、それを大事なことだと思ってくれたから。これからは、一緒に前へ向けて進みましょう。以前からそうですが、あなたたちこそ僕の雇用者です。あらためて、ただ、ありがとうと言いたいです」とファンに感謝を捧げた。
だが、ここから前に進んでいく上で、デップは裁判で勝ち取った合計1,035万ドルを、ハードからどう回収するのだろうか。デップもハードに200万ドルの支払いを言い渡されたので、差し引きした場合、ハードの支払い分は835万ドルとなるが、それでも相当だ。判決の翌朝にテレビ出演したハードの弁護士イレーン・ブレデホフトは、ハードがそのお金を払えるのかと聞かれると、「絶対に払えません」と答えていた。
ハードが裁判で証言したところによると、「アクアマン」で得たギャラは100万ドル、続編はその倍。彼女が2019年、ロサンゼルスのダウンタウンから東へ車を2時間半以上走らせたところにあるヤッカ・バレーに購入した一軒家は、現在100万ドル前後の価値があると推定されている。この裁判のための高額な弁護士代は、その家のための保険でカバーされたようだし、離婚の時にデップが支払った700万ドルの残りもまだあるだろう。デップはそれらを全部差し押さえた上で、不足分は、将来ハードが仕事をして得るギャラの一部か全部を、裁判所を通じて支払わせることができる。
もっと手っ取り早く終わらせたいのであれば、デップがハードからお金を受け取る権利を安く回収業者に売ってしまうという方法がある。業者はハードが判決で決められた満額を払い切るまで回収するので、その差額が儲けとなり、デップにとっては、得られる金額は大きく減っても、時間と気苦労が省ける。
しかし、デップがこれらの手段を選ぶことは想像しがたい。どちらも正当な方法で、デップにはその権利があるのだが、この先ずっとハードを非常に苦しめることになるのは誰の目にも明白だからだ。
裁判の間、デップは最初から最後まで、自分が求めるのは真実を明らかにすることだけだと述べていた。デップの弁護士も、彼の目的は、お金でも、ハードに罰を与えることでもないと言っている。たった今も、デップは「これから前へ向けて進もう」と言ったばかりだ。それなのに時間をかけてでもハードから金を取り立てようとしたら、イメージダウンにつながりかねない。
敗訴した後も自分が被害者だという態度を変えていないアンバー・ハード
敗訴した後も自分が被害者だという態度を変えていないアンバー・ハード(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
ということで、最も考えられるのは、示談により、新たな金額で合意をすることだ。払えないで困っているのはハードのほうなので、この話し合いをリードするのはデップとなる。憶測のひとつとして、金額を思いきり安くしてあげる代わりに、今後二度とDV被害者として発言しないようデップはハードに約束させるのではないかということが聞かれる。その条件を受け入れれば、ハードは控訴もできなくなり、この件は終わる。それはデップにとっても悪いことではない。
ただ、問題は、ハードを信頼できるかどうか。離婚の時にも、デップはハードが要求する通り700万ドルを払ったが、ハードは、カップルだった頃のことは語らないという約束を破ってあの「Washington Post」の意見記事を書いたのだ。また、デップ支持者の間では、後になってハードが「金額を下げたのは彼に罪悪感があるから」と言い出すのではないかと懸念する声もある。そんなふうに他人から言われるまでもなく、ハードがどんな人かは、デップ自身が誰よりも知っているだろう。
とは言え、今回の場合、約束を破れば、ハードは一生、支払いに追われ続けることになる。名誉毀損裁判を起こされたことについて、ハードは「私はもう先に進みたいんです。でもジョニーがそれをさせてくれないのです」と証言台でぼやいていた。それが本当の気持ちであるならば、今こそハードは真摯にこの判決に向き合うべきである。
猿渡由紀
L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「週刊SPA!」「Movie ぴあ」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイ、ニューズウィーク日本版などのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。
猿渡由紀 | L.A.在住映画ジャーナリスト
2022年6月8日 7時45分 配信
イギリスでファンに囲まれるジョニー・デップ(写真:Splash/アフロ)
勝訴から1週間。ジョニー・デップが祝福ムードに酔っている。音楽活動で現在イギリスにいるデップは、現地時間日曜、バーミンガムのインド料理店に20人ほど親しい人を招待し、貸し切りパーティを開いた。報道によれば、デップはその一晩で5万ポンド(およそ821万円)を落としていったそうだ。
また、火曜には、インスタグラムにあらためて支持者への感謝のメッセージを投稿。ヴァージニア州フェアファックスの裁判所の前に集まってくれたファンに手を振る映像や、舞台でライブ演奏する映像を編集した動画とともに、「僕にとって最も大切な、忠実で揺るぎない支持者の人々へ。僕たちはどんなところにも一緒に行き、すべてをともにしてきました。同じ道を歩き、一緒に正しいことをしてきました。みなさんが、それを大事なことだと思ってくれたから。これからは、一緒に前へ向けて進みましょう。以前からそうですが、あなたたちこそ僕の雇用者です。あらためて、ただ、ありがとうと言いたいです」とファンに感謝を捧げた。
だが、ここから前に進んでいく上で、デップは裁判で勝ち取った合計1,035万ドルを、ハードからどう回収するのだろうか。デップもハードに200万ドルの支払いを言い渡されたので、差し引きした場合、ハードの支払い分は835万ドルとなるが、それでも相当だ。判決の翌朝にテレビ出演したハードの弁護士イレーン・ブレデホフトは、ハードがそのお金を払えるのかと聞かれると、「絶対に払えません」と答えていた。
ハードが裁判で証言したところによると、「アクアマン」で得たギャラは100万ドル、続編はその倍。彼女が2019年、ロサンゼルスのダウンタウンから東へ車を2時間半以上走らせたところにあるヤッカ・バレーに購入した一軒家は、現在100万ドル前後の価値があると推定されている。この裁判のための高額な弁護士代は、その家のための保険でカバーされたようだし、離婚の時にデップが支払った700万ドルの残りもまだあるだろう。デップはそれらを全部差し押さえた上で、不足分は、将来ハードが仕事をして得るギャラの一部か全部を、裁判所を通じて支払わせることができる。
もっと手っ取り早く終わらせたいのであれば、デップがハードからお金を受け取る権利を安く回収業者に売ってしまうという方法がある。業者はハードが判決で決められた満額を払い切るまで回収するので、その差額が儲けとなり、デップにとっては、得られる金額は大きく減っても、時間と気苦労が省ける。
しかし、デップがこれらの手段を選ぶことは想像しがたい。どちらも正当な方法で、デップにはその権利があるのだが、この先ずっとハードを非常に苦しめることになるのは誰の目にも明白だからだ。
裁判の間、デップは最初から最後まで、自分が求めるのは真実を明らかにすることだけだと述べていた。デップの弁護士も、彼の目的は、お金でも、ハードに罰を与えることでもないと言っている。たった今も、デップは「これから前へ向けて進もう」と言ったばかりだ。それなのに時間をかけてでもハードから金を取り立てようとしたら、イメージダウンにつながりかねない。
敗訴した後も自分が被害者だという態度を変えていないアンバー・ハード
敗訴した後も自分が被害者だという態度を変えていないアンバー・ハード(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
ということで、最も考えられるのは、示談により、新たな金額で合意をすることだ。払えないで困っているのはハードのほうなので、この話し合いをリードするのはデップとなる。憶測のひとつとして、金額を思いきり安くしてあげる代わりに、今後二度とDV被害者として発言しないようデップはハードに約束させるのではないかということが聞かれる。その条件を受け入れれば、ハードは控訴もできなくなり、この件は終わる。それはデップにとっても悪いことではない。
ただ、問題は、ハードを信頼できるかどうか。離婚の時にも、デップはハードが要求する通り700万ドルを払ったが、ハードは、カップルだった頃のことは語らないという約束を破ってあの「Washington Post」の意見記事を書いたのだ。また、デップ支持者の間では、後になってハードが「金額を下げたのは彼に罪悪感があるから」と言い出すのではないかと懸念する声もある。そんなふうに他人から言われるまでもなく、ハードがどんな人かは、デップ自身が誰よりも知っているだろう。
とは言え、今回の場合、約束を破れば、ハードは一生、支払いに追われ続けることになる。名誉毀損裁判を起こされたことについて、ハードは「私はもう先に進みたいんです。でもジョニーがそれをさせてくれないのです」と証言台でぼやいていた。それが本当の気持ちであるならば、今こそハードは真摯にこの判決に向き合うべきである。
猿渡由紀
L.A.在住映画ジャーナリスト
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「週刊SPA!」「Movie ぴあ」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイ、ニューズウィーク日本版などのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。
なぁちゃんの心を明るく照らしてくれる存在って?【西野七瀬のななせるふ。】
2021年12月14日
七瀬のななせるふ。「光る」
きらめくメイクや、まぶしいくらいに楽しい時間。なぁちゃんの心を明るく照らしてくれる存在って?
親友が私のために考えてくれた最高の休日プラン。きらきら輝いた1日になりました。
娘を思う父親の姿を見て、涙が込み上げてきました
きらきら輝くメイクは、私の中で特別なもの。お仕事ではナチュラルメイクをすることが多いので、今回みたいに目元にパールをのせるのは新鮮で楽しかったです! パールは“涙の象徴”とされているそう。私が最近涙を流しそうになったのは、ムロツヨシさん主演の映画『マイ・ダディ』を見た時。ムロさん演じる主人公の牧師さんは普段は穏やかなのに、大切な娘のことになると冷静ではいられなくなってしまう、その葛藤しているお芝居が本当に素晴らしくて! 涙が込み上げてくるシーンが何度もあったんですけど、夜遅かったので翌日のお仕事のことを考えると目を腫らすわけにはいかなくて、 心では泣きながら、必死で涙をこらえました。映画を見たのは、ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』の現場でムロさんが「よかったら映画を見てコメントをいただけませんか?」って声をかけてくださったのがきっかけ。福田雄一さん、戸田恵梨香さん、永野芽郁さん……コメントを送ったそうそうたる皆さんの中に私も呼んでいただけて、すごく光栄でした。
部屋の照明は、完全に暗め派。スタジオのメイクルームは基本的に明るい空間なので、朝は光が染みないよう、最初は目をつむってメイクしてもらっています(笑)。楽屋の電気も、片隅の1か所だけつけておいて、あとは全部消しちゃうことがほとんど。目にあまり刺激を与えたくなくて、スマホのディスプレイの色も夜9時~朝9時までは暖かい色に切り替えられる設定に。そんなスマホで私がチェックしているのは、相変わらず猫の動画。最近は、トリミング動画にハマっています。シャンプーして、ブローして、毛玉を整えて……キレイになっていく過程が好きで、ずーっと見てしまいます。
この間、久々にまる1日のオフがあったんです。(伊藤)かりんちゃんにその日がお休みだと伝えたら、「修学旅行みたいになっちゃうけど、どう?」って提案してくれたのが、シャインマスカット狩りをして、吹きガラス体験をして、ほうとうを食べるっていうプラン。すぐに「最高すぎる!」って返事をして、いつも謎解きに行っているメンバーのうちの4人で出かけてきました。吹きガラス体験は、窯の前で滝汗をかいたらどうしようと思って着替えとタオルを持参して行ったんですけど、実際は暑すぎることもなく、そして想像を上回るくらい楽しかったです! 私が作ったのは、茶色と白の2色をひねりながら入れて、さらに泡を加えた一輪挿し。小さいガラス玉の状態から一生懸命息を吹き込んでいくうちに、どんどん愛着がわいてきたんですよね。完成品が届いたら、お花を生けるのが楽しみ♪ あっという間に時間が過ぎて、気持ちが明るくなった1日でした。
マンションの住人みんなの変わらない姿にワクワク!
12月10日に、映画『あなたの番です 劇場版』が公開されます。撮影ではキャストの皆さんと久しぶりに再会できて、うれしかったですね。2年前のドラマのオンエア中は13歳だった荒木飛羽くんはすっかり身長が伸びていたけど、当時と同じようにゲームについて熱くしゃべりかけてくれて、クールで無口そうな見た目とのギャップが可愛くて。変わらずお菓子を食べている姿にもホッとしました(笑)。私は公開に先がけて完成作品を見させてもらったんですけど、めちゃくちゃおもしろかったです! マンションの住人一人一人の際立っているキャラクターが大好きなので、変わらない皆さんの役柄の雰囲気にワクワクしました。ドラマを楽しく見てくださっていた方なら、映画もきっと楽しんでもらえるんじゃないかな、と思っています。
「光る」から連想して指輪になったどいやさんを描こうと思っていたのに、気がついたらぐったりした溶けかけの状態に(笑)。
2022年1月号掲載
#元乃木坂46##西野七濑[超话]#
2021年12月14日
七瀬のななせるふ。「光る」
きらめくメイクや、まぶしいくらいに楽しい時間。なぁちゃんの心を明るく照らしてくれる存在って?
親友が私のために考えてくれた最高の休日プラン。きらきら輝いた1日になりました。
娘を思う父親の姿を見て、涙が込み上げてきました
きらきら輝くメイクは、私の中で特別なもの。お仕事ではナチュラルメイクをすることが多いので、今回みたいに目元にパールをのせるのは新鮮で楽しかったです! パールは“涙の象徴”とされているそう。私が最近涙を流しそうになったのは、ムロツヨシさん主演の映画『マイ・ダディ』を見た時。ムロさん演じる主人公の牧師さんは普段は穏やかなのに、大切な娘のことになると冷静ではいられなくなってしまう、その葛藤しているお芝居が本当に素晴らしくて! 涙が込み上げてくるシーンが何度もあったんですけど、夜遅かったので翌日のお仕事のことを考えると目を腫らすわけにはいかなくて、 心では泣きながら、必死で涙をこらえました。映画を見たのは、ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』の現場でムロさんが「よかったら映画を見てコメントをいただけませんか?」って声をかけてくださったのがきっかけ。福田雄一さん、戸田恵梨香さん、永野芽郁さん……コメントを送ったそうそうたる皆さんの中に私も呼んでいただけて、すごく光栄でした。
部屋の照明は、完全に暗め派。スタジオのメイクルームは基本的に明るい空間なので、朝は光が染みないよう、最初は目をつむってメイクしてもらっています(笑)。楽屋の電気も、片隅の1か所だけつけておいて、あとは全部消しちゃうことがほとんど。目にあまり刺激を与えたくなくて、スマホのディスプレイの色も夜9時~朝9時までは暖かい色に切り替えられる設定に。そんなスマホで私がチェックしているのは、相変わらず猫の動画。最近は、トリミング動画にハマっています。シャンプーして、ブローして、毛玉を整えて……キレイになっていく過程が好きで、ずーっと見てしまいます。
この間、久々にまる1日のオフがあったんです。(伊藤)かりんちゃんにその日がお休みだと伝えたら、「修学旅行みたいになっちゃうけど、どう?」って提案してくれたのが、シャインマスカット狩りをして、吹きガラス体験をして、ほうとうを食べるっていうプラン。すぐに「最高すぎる!」って返事をして、いつも謎解きに行っているメンバーのうちの4人で出かけてきました。吹きガラス体験は、窯の前で滝汗をかいたらどうしようと思って着替えとタオルを持参して行ったんですけど、実際は暑すぎることもなく、そして想像を上回るくらい楽しかったです! 私が作ったのは、茶色と白の2色をひねりながら入れて、さらに泡を加えた一輪挿し。小さいガラス玉の状態から一生懸命息を吹き込んでいくうちに、どんどん愛着がわいてきたんですよね。完成品が届いたら、お花を生けるのが楽しみ♪ あっという間に時間が過ぎて、気持ちが明るくなった1日でした。
マンションの住人みんなの変わらない姿にワクワク!
12月10日に、映画『あなたの番です 劇場版』が公開されます。撮影ではキャストの皆さんと久しぶりに再会できて、うれしかったですね。2年前のドラマのオンエア中は13歳だった荒木飛羽くんはすっかり身長が伸びていたけど、当時と同じようにゲームについて熱くしゃべりかけてくれて、クールで無口そうな見た目とのギャップが可愛くて。変わらずお菓子を食べている姿にもホッとしました(笑)。私は公開に先がけて完成作品を見させてもらったんですけど、めちゃくちゃおもしろかったです! マンションの住人一人一人の際立っているキャラクターが大好きなので、変わらない皆さんの役柄の雰囲気にワクワクしました。ドラマを楽しく見てくださっていた方なら、映画もきっと楽しんでもらえるんじゃないかな、と思っています。
「光る」から連想して指輪になったどいやさんを描こうと思っていたのに、気がついたらぐったりした溶けかけの状態に(笑)。
2022年1月号掲載
#元乃木坂46##西野七濑[超话]#
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